少し前に留保利益に対して課税をするといったことや小池議員がトヨタの留保利益に対して文句を言ったことがありましたね。
共産・小池氏「トヨタ自動車の3月期決算を見てみたら、子会社も含めて連結内部留保は約20兆円。毎日1千万円ずつ使っていくとする。想像できませんが、使い切るのに5480年かかる。縄文時代ぐらいから使い始めて、ようやく最近使い終わる」 https://t.co/ygZiS0Gznl
— 小池晃 (@koike_akira) June 29, 2018
しかし、会計を勉強していると「留保利益」といった言葉に馴染みがありません。そこで世間一般で留保利益とは何を指しているのか、どういった問題があるのかをまとめてみました。
留保利益とは、利益剰余金のこと
まずは留保利益の定義を検索してみました。
留保利益とは、
期間損益に期間外損益を含めて計算された純利益のうち,株主への配当,税金引当,役員賞与などを控除した差額で,会社内に蓄積された部分をいう。一般に利益剰余金とも呼ぶ。
なるほど、利益剰余金を世間一般では留保利益と呼ばれているようです。以降では説明を簡単にするために「留保利益」ではなく「利益剰余金」として説明します。
利益剰余金を簡単に説明すると、文字通り利益の余ったお金です。(厳密には違いますが)利益剰余金があれば株主への配当を行うことができます。
ではその全額が配当に使われるかといったら、そうではありません。会社員に置き換えると、その月の給料から生活費を差し引いたものが利益剰余金になりますが、その全額を使っちゃいますか? 使いませんよね。将来に備えて貯金する人がほとんどでしょう。
企業も同じで、企業は不足の事態に備えて、企業内になる程度の資金を貯めておく必要があります。また利益剰余金を投資に使って、さらに利益を伸ばしていくことをします。
「利益剰余金」=「現金の保有量」ではない
会計をあまり知らない人にとっては、留保利益や利益剰余金と聞くと、その数額だけ企業内に現金を保有しているように感じされると思います。しかしこれは大きな間違いです。
現金保有割合が多いとされている任天堂の2018年3月期の連結決算を見てみましょう。
利益剰余金:1,564,240百万円
現金:744,555百万円
利益剰余金がおよお1兆5600億に対して現金は7500億円となっており、現金は利益剰余金の半分にも達していません。「半分にも」という表現をしましたが、一般的に見て任天堂の現金保有割合は多いので、他の企業の現金保有割合はもっともっと低いです。
なぜ利益剰余金が現金と同額にならないかと言えば、企業は利益を様々な投資に使っているからです。仮に利益を全額配当して借入を行わないとすると、新規の投資ができなくなり、現状以上の収益を上げることは不可能です。利益を上手く投資することができれば、来季以降の収益向上が見込めます。
利益を投資するということは、お金をそれ以外の資産に変えることを意味します。事業投資の場合、有形固定資産を購入すれば、現金が減り、その分有形固定資産が増えることになります。このとき、利益剰余金の数額は変動しませんから、現金が減り、利益剰余金は据え置きとなります。
ちなみに、利益剰余金は基本的には配当でしか減額されません。