就活ルールが廃止になれば、就活は一変する

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就職活動のニュースとしてどでかいニュースが入ってきました。

次のリンクをご確認ください。

経団連会長である中西会長が2021年春以降入社の学生の採用活動に関して、就活ルール(採用選考に関する指針)の廃止について述べています。

この就活ルールがもし廃止されたら、就活が一変します。

現在の新卒一括採用の土台には、この就活ルールがあります。就活ルールには2017年春入社以降の採用に関して「3月から会社説明会」「6月から面接」ということが規定されているため、企業は採用活動をこの規定に従って行います。学生も当然そのスケジュールに従います。

就活ルールがなくなったら、企業は自由にスケジュールを組み、その影響を受けて学生も自由に就活を行います。「自由」というのは響きがいいですが、ここ何十年もあった就活を行う目安の時期が一切なくなるため、企業・学生の双方に混乱が予想されます。

では、就活ルールが廃止になった場合にどんな変化が起こるのか、具体的に考えてみました。

 

 

就職情報サイトは「年次もの」から「通年もの」へ

現在の就活において、多くの学生はリクナビやマイナビといった就職情報サイトを利用しています。

特に3月1日は企業・企業の双方にとって一大イベントです。企業側はなるべく早く志望してくれる学生を確保しようとしますし、学生側はあっという間に予約がいっぱいになってしまう人気企業の説明会を予約しようとします。サイトにアクセスが集中して接続することができないということがよく起こっていました。

なぜこんなことが起こるかというと、就活ルールが存在しているからです。就活ができる年次・時期にならないと、企業も学生も行動ができません(みんなこっそり動いていますが)。就職情報サイトもそういった就活マーケットを理解しています。このことは就職情報サイトの名前にも表れていて「リクナビ2019」「マイナビ2019」というように卒業年度が必ず付いています。就職情報サイトは年次を重視してサービス提供しているのがお分かりでしょう。

しかし、就活ルール廃止となると、状況は激変します。

どの時期から採用活動を開始するかは企業に委ねられますので、3月1日で学生を確保するといったことはなくなります。学生も企業の自由な採用活動に合わせて、自身の就活を行うことになります。

そんな状況になれば、就職情報サイト側からしたら、3月にサービス開始する意味はありません。だって3月1日の重要性はないに等しいのですから。

そのかわりに企業の幅広い採用ニーズに応える必要があります。具体的には「様々な年次の学生に早期に接触したい」というニーズが増えることが想定されます。学生側もそういった企業の動きに合わせて、年次関係なく就職活動を行えるような就職情報サイトを求めます。そのため、学生であればいつでも利用できるような「通年もの」の就職情報サイトに変化していくでしょう。

 

就活格差が広がる

就活ルールにはわかりやすさというメリットがあります。スケジュールに従っていれば(一部の外資系やベンチャー企業を除く)大企業の採用の機会を逃すといったことは起こりにくい。学生にとっては就活を開始しなきゃいけない時期がはっきりとわかっているため、学業から就活への切り替えもしやすい。

しかし就活ルールが廃止されれば、就活におけるわかりやすさは一掃され、いわば無法地帯となります。

企業の採用開始は3月ではなくなり、企業によって採用の時期が異なるようになります。そのため、学生は就活ルールが存在していた頃は遅くとも3月から就活をすればよかったのに、撤廃された後はいつから就活をすればいいかわからなくなります。就活ルール撤廃は学生にとって就活をし始めるわかりやすいきっかけを失うのです。

こういった状況の変化は、意識の高い学生にとっては就活がよりしやすい環境になります。彼らはもともと就活ルールなんぞに縛られずに自由に就活をしているため、3月というきっかけは必要がありません。また、あらゆる企業が自由に採用活動を行うようになるため、これまで3月より前には採用活動が消極的だった企業にも数多く接触する機会が増えます。また接触すれば採用までつながる可能性だって広がります。意識の高い学生にとって就活ルール撤廃は良いことづくめです。

一方で、意識の低い学生にとって就活ルール撤廃は完全な逆風になります。3月という就活をスタートするきっかけがなくなるため、意識が低いままであれば就活をせずに卒業を迎えることになります。仮に途中で就活を行い始めたとしても、後述する「超青田買い」の影響で大企業への就活はかなり厳しいものとなります。結果として選べる企業は今よりかなり少なくなります。

このように、就活に対して意識の高い学生と意識の低い学生の間での就活格差が広がると考えます。

 

様々な採用手法が開発される

3月からの採用開始だと、やれることは限られてきます。王道なのは「書類選考→Webテスト→面接」といった感じでしょうか。時間の制限があるので仕方がないですが、どの企業の採用手法も同じようになります。比較的短期間で採用する学生を決定するため、企業と学生のミスマッチが声高に叫ばれたりします。

そんなミスマッチを解消するために、年々、大学1~3年生を対象にインターンシップが多く行われるようになりました。これは喜ばしいことですが、その中身は問題が多い。海外のように採用に直結することはなく、簡単な職場体験でしかない場合が多いです。これは就活ルールが影響しています。6月以降でないと採用活動は行えないため、インターンシップはできるが採用にはつなげられないというなんとも煮え切らない状態が生まれています。採用につながらないのであれば、企業としては学生に自社の業務をやってもらうという意欲は出てきません。

就活ルールが廃止になれば、インターンシップから採用といった形にすることができるため、海外のような採用の流れも多くなります。

その他にも、学生の興味を惹かせるためにも、様々な採用手法が開発されると考えます。

 

「青田買い」がさらに加速して「超青田買い」に

いつでも採用活動をしていいということになれば、採用活動に意欲がある企業であればあるほど優秀な学生をいち早く確保しようと動き出します。 企業によっては学生が大学に入学してすぐに接触するといったこともありえます。現在ですら一部の企業が行う学生の「青田買い」が批判されることがありますが、就活ルールがなくなればその傾向はさらに強まり、「超青田買い」というような状況が生まれます。

まあ「超青田買い」な新卒採用市場でも大企業はまだ乗り切れます。その気になれば採用に人とお金を割く余裕くらいはあります。

問題は中小企業です。大企業ほどの人とお金を持っていない中小企業は採用が後手に回ります。採用を始めようと思っても、そのときには時すでに遅し。「超青田買い」の影響で採用できるのは就職意識が低く能力も低い学生だらけになります。成長率の悪い大企業が人材確保できて、成長率の高い中小企業が人手不足倒産……というのは、笑えませんが十分にありえる未来です。

 

終わりに

就活ルール撤廃というのは経団連としての決定ではない段階ですが、人材の流動化やグローバル化の潮流を考えると、就活ルール廃止は遅かれ早かれ実現するでしょう。特に成長率の高いIT業界は経団連に所属していない場合が多いので、すでに自由に採用活動を行っています。

いずれにしても、学生の皆さんは一日でも早く就職意識を持ちましょう。大学は確かに学業の場ではありますが、自分の将来を決める場所でもあります。そこには当然就職という選択肢があります。就活ルールが廃止になれば、就活の明確なスタートがないため、気づかないうちに自分だけ内定先がないなんてことがありえます。

自分の将来は自分で決めるものです。就活ルールに囚われず、自由に自分の将来を考えてみてください。

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