・大手監査法人の中には、大きく分けて4つの事業部がある
・各事業部のメリットとデメリットを解説
監査法人内には様々な仕事がありますが、「監査」をベースに考えると大きく分けて4つに区分できます。
監査法人の主な事業部の種類
- 一般事業会社
- IPO
- 金融
- パブリック
この記事では、その4つの事業の概要やメリット・デメリットについて簡単に説明をします。
アドバイザリーや税務といったことは説明しませんので、その点はご注意ください。
なお、僕は事業会社の監査(つまり普通の監査)を担当しているため、金融やパブリックはそこまで詳しくないです。なので、金融やパブリックに興味を持った方は、監査法人のリクルーターや採用担当者からより詳しく話を聞くのをオススメします!

「一般事業会社」のメリット・デメリット
金商法で監査が求められている上場企業やその子会社、会社法で監査が求められている非上場会社などを監査する部署です。
簡単に言ってしまえば、公認会計士受験生がイメージしている監査そのものです。
監査法人に勤めている人の多くの人は、一般事業会社に携わっています。
一口に一般事業会社といっても、監査での携わり方は会社ごとに異なってきます。
大規模の日本企業の監査を中心にする部署があれば、中小規模の会社を中心にする部署、IFRSやUSGAAPなどいわゆる海外関連の仕事を中心にしている部署など、様々です。
これらのどの部署に携わるかによって、監査人としてのキャリアに違いが出ます。
大規模のクライアントに携わると特定の勘定科目や内部統制に張り付きといったことがよくあります。
そのため、かかわった勘定科目や内部統制にはべらぼうに強くなります。
その反面、会社の全体感が分からないなどのデメリットがあります。
中小規模のクライアントだと会社全体の理解は比較的簡単ですが、人が足りずに表面的な手続きだけで手いっぱいになるといったことも多いです。
このような違いがあるので、「普通の監査がしたいなー」という気持ちだけで部署を選ぶと、思わぬギャップを感じることがあります。
そのため、一般事業会社の監査の中で具体的なビジョンを持っている場合は、そのことをリクルーターにぶつけたり面接の時に伝えたりしましょう。
そうすると、就職後も自分の希望したクライアントにアサインされる可能性が高くなります。
「IPO」 のメリット・デメリット
IPO(Initial Public Offering)、つまり上場準備会社や上場したばかりの企業の監査を中心に扱う部署です。
先ほどの一般事業会社の監査はすでに上場済みで歴史ある企業が中心ですが、こちらはまだまだ歴史が浅い企業に携わることが多くなります。
歴史が浅い企業は、社内の環境が不十分で上場に耐えられるような体制になっていないことがほとんどです。
そのため、監査人のかかわり方も「監査」というよりは「アドバイザリー」のようなかかわり方が強くなります。
会社の財務諸表のチェックマンではなく、実際に会社の内部を作っていくような感覚がありますから、イケイケ感がかなりあります。
また、やりがいが見えやすくビジネスも新しいため、独立志向の高い受験生には人気の分野です。
一方で、監査や会計の知識は弱くなりがちです。
というのも、会社内を上場に耐えられるように最低限整えるのが精いっぱいになってしまうので、きちんと監査するところまで気が回りません。
IPO出身の会計士が一般事業会社の監査で活躍できないという話は、よく聞く話です。
加えて、1年間を通じて激務になりがちです。
普通の監査は期末が激務で、四半期レビューはさほど忙しくないということが多いです。
しかしながら、IPOは監査というよりもアドバイザーであるため、必要とされる時期が1年中となってしまいます。
会社が未熟ですから、少し調べればわかることも会計士へ質問することも多いです。
それを対応しないわけにはいきませんので、また余計に時間がとられます。
さらに、IPOの会社は監査報酬が低いので、チームに十分な人数がいません。
そのため、少ない人員で会社の内部統制を整えたり質問に対応しなければならないため、一人当たりの負担は自然と多くなります。
「金融」 のメリット・デメリット
銀行や証券会社の監査を担当する部署です。
一般事業会社と同じくくりでもいいと思うかもしれませんが、金融関連は会計基準などに特殊性があるため、別部署として区分されています。
そのため、金融事業部に入ると専門性を高められるといわれます。
また、監査だけでなくアドバイザリー業務に触れるチャンスも多いと言われます。
この辺りの独立性の問題はわかりませんが、事業会社の監査でアドバイザリーに関わることはほとんどないので、大きな違いと言えます。
デメリットとしては、金融関連に特化してしまう点です。
金融と一口で言っても、銀行や証券会社、資産運用などでさらに細かく部署が分かれます。
そしてそれぞれで専門性が高いので、銀行関連に携わっていた人が証券会社の監査をすぐできるかと言われれば、おそらくできないです。
その専門性の重さというのは、転職で困ります。
例えば、普通の事業会社の経理に転職しようと思っても、金融の専門性は事業会社で使えることが少ないため、転職が難しいと聞いたことがあります。
逆に、監査法人を出た後に金融系にかかわりたいと思っているのであれば、金融に関する高い知識を得られて転職に有利になることは間違いないので、金融事業部一択でしょう。
「パブリック」 のメリット・デメリット
官公庁や病院などの監査を中心に扱う部署です。
特徴やメリット・デメリットは金融と同じです。
ただ、官公庁や病院などの監査の数はまだまだ少ないので、一般事業会社の監査も並行して携わることが多いです。
そのため、金融よりは幅が広く監査に携わることができます。
今後、官公庁や病院、学校の監査の需要は伸びると思われます。また、パブリックに強い会計士はこれまでの需要の低さから、人数が多くありません。
この状況をブルーオーシャンととらえて、今後はパブリックで食べていく!という気概がある人は、意外と狙い目な部署だと思います。
この記事のまとめ
- 普通に監査したいのであれば「一般事業会社」
- バリバリ働きたい・新しいビジネスに触れたいなら「IPO」
- 専門性を高めたいなら「金融」「パブリック」
ここまで読んだ方の中には「国内や海外で分けないの?」と思う方もいるかもしれません。
年々グローバル化が進んできていて、これまで国内監査だけだった企業でも、海外子会社が大きくなったために重要な構成単位に含まれて監査をするというケースが増えています。
そのため、大手監査法人に入った場合、国内・海外の区分は年々なくなってきています。
僕も基本は国内企業の監査ですが、IFRSやUSGAAPに触れることはとても多いです。
「英語はどうしても触れたくない…」「海外の会計基準に興味はない」という方は、大手ではなく日本企業の監査が中心である中小の監査法人の方がいいかもしれません。
いずれにしても、自分がどういった経験を監査法人で得たいかによって、どの事業部を選ぶかを決めることを強くオススメします。
面接するまでにはそのイメージを固めておくと、内定がもらいやすいですし、働き始めてからの期待ギャップも少ないです。
この記事がみなさんの就活に少しでも役立つと幸いです。