・監査法人の定期採用の就活の注意点
論文式試験が終わったのもつかの間、合格発表を待つ間に就職活動を進めないといけません。
しかし、試験が終わった解放感から、就活は適当にやってしまう人が多いように感じます。
そこで、この記事では、監査法人の就活(定期採用)の際に注意してほしいポイントをまとめてみました。
面接やESといったテクニカルな部分ではなく、就活イベントとの向き合い方や監査法人が考える採用の裏側など、就活の土台の部分について解説しています。
これを読んだ後に就活をすれば監査法人選びに失敗することは少なくなると思いますので、ぜひ読んでみてください。
目次
就活イベントで会った人の言葉を鵜呑みにしてはいけない

大手監査法人の就活イベントに参加すると、1人の就活生に対して1人のリクルーターが対応してくれることが多いです。
就活生からしたら、自分のために丁寧に対応してくれるリクルーターは、自分がVIPな存在になったような気にさせてくれます。
そんな浮かれた状態でリクルーターから聞く監査法人の話は、魅力的に聞こえるはずです。
また、就活イベントには現場で働くマネージャーやパートナーが数多く参加しています。
彼らは人当たりがよく、就活生の話をよく聞いてくれて、質問に丁寧に答えてくれます。
上位職階の人たちから優しくされたら、就活生はどこかいい気分になるはずです
こういったリクルーターやマネージャー、パートナーというのは、就活生の就職先選びにとても役立つように聞こえるかもしれません。
しかし、彼らの言ってたことを鵜呑みにして法人を選ぶことで、大失敗することもあります。
リクルーターは経験が圧倒的に足りてない
リクルーターの多くは若手の職員であり、彼らは去年まで受験生や就活生だった人たちです。
要は、リクルーターの経験値というのは、就活生の皆さんと大差がないと言えます。
そんなリクルーターが、就活生に「監査の仕事の魅力」や「監査法人の雰囲気」を正しく伝えられているかは、けっこう微妙だと思います。
もちろん、リクルーターにもいいところはあります。
それは、就活生と距離が近いということです。
それこそ、就活生と同じような悩みをリクルーターは抱えていましたから、就活生の悩みというのがよく分かります。
このようなリクルーターの特徴が分かってくると、効果的なリクルーターの活用方法としては、「就活の素朴な悩みを聞いてもらう」「よい先輩を紹介してもらう」といった感じでしょう。
たまに前職があるリクルーターやシニアスタッフのリクルーターがつくこともありますが、その場合はちょっとラッキーで、結構参考になる話が聞けると思います。

マネージャーやパートナーは口が上手い
マネージャーやパートナーの話は信じていいのかと言われたら、こちらも怪しいものです。
なぜなら、就活イベントに出てくるようなマネージャーやパートナーは、法人の印象をアップできる最適な人材を選んでいるからです。
彼らは就活生が「一緒に働きたい!」と思わせてくれるほど魅力的に見える存在ですし、法人のこともうまくPRできる人たちです。
間違っても、激務で目が死んでいるような人は就活イベントには出てきませんし、自分の法人の闇を言うような人もいません。
いいところは聞けるけど、悪いところは聞けないのが、マネージャーやパートナーです。
どうしたら生の声を聴けるのか

じゃあ誰に話を聞いたら、その監査法人の本当のことを知れるの?
監査法人の実情や生の声というのは、就活イベントから情報を収集するのは難しいです。
そこで、私がオススメする手段は知り合いからその監査法人の中の人を紹介してもらうという方法です。
リクルーターでもなければ、就活イベントに出てくるようなマネージャーやパートナーではない人が、その監査法人の本当の情報を赤裸々に語ってくれます。
その監査法人の雰囲気や働き方、希望のアサイン通りになるのかなど、就活に関係ない人だからこそ、率直な意見をもらえます。
私が就活した時も、自分の友人や先輩にお願いして紹介してもらった人からの話が一番参考になりました。

イベントの参加率や面談の内容は評価されている

希望の監査法人から内定を獲得するときに大切にしてほしいことがあります。
それは希望の監査法人や部署の就活イベントの参加率です。
監査法人の気持ちとして、優秀な人を大量に採用したい一方で、うっかり内定を多く出しすぎたばっかりに人余りになることも恐れています。
そのため、監査法人は「内定を出せば高い可能性で自分の法人を選んでくれる就活生」を求めています。
そこで監査法人の内部の評価で使われることがあるのが、イベントの参加率というわけです。
イベントの参加率が高ければ、その監査法人や部署を高い志望度であると評価されることがあります。
もしあなたが内定の当落線上にいる場合、イベント参加率で内定をもらえるかどうかが左右される可能性があります。
ある程度でもいいので希望の監査法人や部署が決まってきたら、それらが開催しているイベントには積極的に参加しましょう。
監査法人や部署の理解がさらに深まりますし、就活で有利に働きますので、就活イベントは参加するだけ得と言えます。
アサイン希望が通るとは限らない

どの監査法人に就職するかを考える時に、どういったクライアントの担当をしたいのかを考える人も少なくないでしょう。
一昔前の会計士の超売り手市場だったときは、就活生が希望するクライアントへのアサインを確約するという手法がありました。
しかし、超売り手市場でなくなった現在、アサインの確約はあまり見られなくなってきたように感じます。
それもそのはずで、就活生が希望するクライアントは分かりやすく花形の人気企業だったりします。
その人気企業がよほどの大口のクライアントでもない限り、新人を何人もアサインをすることは物理的に不可能です。
そのため、「入社を決めてくれたら○○のクライアントの担当にするよ」というのは、あまり信じない方がいいです。
嘘をついているとまでは言いませんが、監査法人が想定していた採用ができなかった場合(特に内定者が多すぎる場合)、そのクライアントに入れる可能性がどうしても低くなります。
なので、希望のクライアントを軸に就活するのはオススメしません。
実際に私も、希望していた企業とは全然違う企業を担当することになりました(笑)。

「監査法人」ではなく「部署」を選ぶこと

就活生が就活すると「監査法人」に焦点を当てがちですが、それ以上に「部署」にも焦点を当ててほしいです。
全体的な雰囲気や風土、制度というのは「監査法人」で決まってくるのは間違いないので、監査法人の違いというのは就活で当然に見極めてください。
そのうえで、「部署」についてもきちんと評価をしてください。
なぜなら、部署ごとによって働き方や雰囲気が異なるからです。
例えば、監査法人の全体で見たら自由な雰囲気だったのに、部署は上下関係がしっかりしている固めの雰囲気ということがあります。
また、部署によってクライアントの規模が違うので、働き方が変わることも良くあります。
具体的には、部署Aは大きなクライアントが多く集まっていて1年で担当する会社数は2社~3社であるのに対して、部署Bは小さなクライアントが多く集まっていて1年で担当する会社数は7社~8社であるといったことです。
実際にあなたの働き方を左右するのは、部署の雰囲気やクライアントです。
もちろん、気に入らない部署であれば異動はできると思いますが、よほどのことがない限り1年ぐらいは我慢しなければならないでしょう。
IPO部門はオススメしない

就活生に大人気の部門は「IPO」です。
勢いのある上場前の企業を見れますし、新しいビジネスに関する監査はとても面白そうですよね。
なにより「自分が携わって上場を達成した」というやりがいは、かなり魅力的なものです。
そのため、就活生のほとんどはIPO部門への興味があります。
私が就活生のころも、「IPO」について積極的に話を聞いていました。

しかし、実際に監査法人で働いた私からすると、IPO部門は就活生には絶対にオススメできないと断言します。
アドバイスができない
IPO準備会社は会計や監査、内部統制が何も構築されていない企業ばかりです。
会社からは「先生、内部統制について質問があるのですが…」といった感じで、様々な質問が来ます。
こういった質問に監査法人に入りたての新人が適切にアドバイスできるかと言えば、Noです。
なぜなら、新人は会計や監査、内部統制のあるべき形を何もわかっていないからです。
「論文式まで合格したからアドバイスなんて余裕よ!」と思うかもしれませんが、びっくりするぐらい座学と現場は違います。
この感覚自体は経験してもらわないとわからないかもしれません。
私もかなり勉強したのですぐに現場に出て活躍できると思ったのですが、学んだことを現場に落とし込むのは本当に難しいなと一瞬で分かりました。

IPO準備会社へちゃんとアドバイスするには、少なくともシニアスタッフになるまでは上場企業の監査を毎年経験するぐらいの準備は必要です。
それからIPO準備会社を担当しても遅くはなく、むしろきちんと仕事をする観点からは最短だと考えます。
激務
監査という業務は、会社の決算月前後はどうしても激務になります。
これは仕事柄で仕方ないです。
しかし、IPOに関しては、年中忙しいです。
普通の監査との違いは、激務の時期が一過性のものかどうかです。
普通の監査は激務の時期がクライアントの決算月や会社の規模、上場の有無を見るだけで大体わかります。
一方でIPOについては、決算月の前後が忙しいのは当然で、そもそも会社の決算が締まらないために監査も終わらないというトラブルに巻き込まれがちです。
また、決算月以外も、様々な質問が昼夜を問わずに連絡が来ますので、休むタイミングを見極めるのが難しいです。
知り合いでIPOを担当している人がいるのですが「決算に関係もない質問が、夜に普通に電話がくる」と嘆いていました…。

監査が何も分からない新人がこういった激務の現場に入れば、高確率で病みます。
もしIPOを希望するのであれば、相当の覚悟を持ってもらいたいと思います。
この記事のまとめ
- 就活イベントで聞いた話を鵜呑みにしないこと
- 就活イベントの参加率は記録されているので、志望度の高い監査法人や部署のイベントには積極的に参加するとメリットが多い
- 監査法人選びも大切だけど、部署選びも大切
- 最初の就職先でIPOの部門は、激務や経験不足が露呈するのでオススメしない
就活イベントを上手く利用できれば、あなたに合った就職先を選べる可能性がグッと高まります。
逆に、就活イベントに乗せられて適当に就職先を選んだら、入所後に後悔するかもしれません。
就活イベントに参加する際には、お客様として受け手に回るのではなく、監査法人や部署を選んでやるんだという攻めの気持ちで臨めば、失敗は少なくなると思います。
ではでは。