5分で読める『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』

2022年1月23日

今回紹介する本は、アメリカの心理学者であるアダム・グラントが執筆した『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』です。

この本に興味を持ったあなたは、多かれ少なかれ「成功したい!」という思いがあるでしょう。

しかし、すでに何をしたら成功するのかが分かっていたら、逆にこの本には興味を持っていないはずです。

それくらい「成功」というものは、定義が難しく、確立した方法論があるわけではありません。

この本でも「こうしたら絶対に成功するよ!」といった内容が書かれているわけではありません。

ただ、本書には、長期的に成功する人のほとんどがギバー(与える人)であること、なぜギバーが成功するのかというメカニズムが、様々な研究をベースに説明されています。

そのため、この本を十分に理解できれば、成功へ向かうための第一歩を踏み出すことは間違いありません。

この記事では、成功するギバーになるためのポイントを 『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』 から要約しましたので、ぜひ読んでみてください。

「ギバー」「テイカー」「マッチャー」とは何か

本書を理解する大切な概念として、「ギバー(与える人)」「テイカー(受けとる人)」「マッチャー(バランスをとる人)」の定義を紹介します。

「ギバー(与える人)」とは何か

ギバーとは、本書では「ギブ・アンド・テイクの関係を相手の利益になるように持っていき、受け取る以上に与えようとする人」と表現されています。

ギバーを僕なりに表現すると「お人よし」です。

自分の不利益をあまり考えずに、つい困っている人を手助けしてしまうような人をギバーだと思ってください。

「テイカー(受けとる人)」とは何か

テイカーとは、本書では「常に、与えるより多くを受け取ろうとする」ような人と表現されています。

本書ではテイカーを「受け取る人」などと書いていますが、これはかなり優しい表現だと思います。

僕が翻訳者なら「奪う人」という表現にしそうです。

このような過激な表現をしたくなるくらい、テイカーは他人よりも自分の利益を優先しますし、自分の利益を優先するためには手段を選びません。

「マッチャー(バランスをとる人)」とは何か

マッチャーとは、本書では「与えることと受けとることのバランスを取ろうとする」ような人と表現されています。

ギバーは与えることが多い人で、テイカーは奪うことが多い人であれば、マッチャーはその間という感じです。

「ギブ・アンド・テイク」という言葉をまさに体現している人がマッチャーであると言っていいでしょう。

ちなみに、世の中の多くの人はマッチャーに属すると本書では説明されています。

そのため、この記事を読んでいる多くの人はマッチャーに該当するでしょうし、言い換えれば普通の人なわけです。

どのタイプが成功に近いのか

「本のタイトル的にギバーが成功する人なんだろうな」と予想すると思いますが、それは正解です。

本の中では販売員を例に挙げていますが「成績トップはギバーで、テイカーやマッチャーよりも平均50%も年収が高い」と説明されています。

燃える人

よっしゃ! 俺も人に与えまくってギバーになってやろう!

と、素直な人は思うかもしれませんが、実はギバーにも落とし穴はあります。

それは、なんと成績の下位もギバーで「テイカーやマッチャーの年間売上は、成績下位のギバーの2.5倍」とのことです。

販売員の成績を上から順にまとめると次の通りになります。

  • 1位:成績上位のギバー
  • 2位:テイカー、マッチャー
  • 3位:成績下位のギバー

つまり、成功するためにはギバーを目指すのは正しい方向だけど、方法を間違えると搾取されるギバーになってしまうのです。

ギバーは「なぜ成功するのか」

「ギバーになれば成功できる」と言われても、そのメカニズムが分からないとギバーを目指したいと思う人は少ないでしょう。

本書では、ギバーが成功する理由や要因について多くのページを使って書かれています。

その中でも、僕が特に大切と思ったギバーの成功要因をまとめてみました。

ギバーは「利益のパイ」を大きくする

本書には以下のような記載があります。

成功したギバーは、自分だけでなくグループ全員が得をするように、パイ(総額)を大きくする。

例えば、10人グループで「100」の利益が得られるプロジェクトがあったとしましょう。

このケースでは、10人で均等に利益を割り振れば、一人当たり「10」の利益が得ることが見込めます。

マッチャーであれば、利益を平等に分け合うような行動になりますので、みんなが「10」の利益を得ることができます。

一方で、テイカーであれば、自分の利益が少しでも多くなるように行動します。

そのため、テイカーは「20」や「30」といった感じで人よりも多く利益を得ることができます。

ただし、テイカー以外の人は「10」以下の利益しか得ることができないため、テイカーに対して不信感が募るでしょう。

マッチャーとテイカーに共通して言えることは、利益のパイ(総額)が「100」であることを前提としています。

一方で、ギバーは利益のパイ(総額)を大きくするように行動するため、グループの利益が「200」や「300」になるように立ち振る舞います。

このようにパイ自体を大きくすることで、自分の利益の割合が減ったとしても、当初ギバーが得るはずの利益の金額よりも多くの利益を獲得することができます。

また、パイが大きくなった影響で、必然的にギバー以外の人の取り分も大きくなりますから、ギバーの信頼は自然と上がっていきます。

利益のパイを大きくする方法

では、どのようにして、ギバーはパイを大きくするのでしょうか。

パイを大きくする方法として僕が目に留まったのは次の一文です。

うまくいかないときは自分が責任を負い、うまくいっているときは、すぐにほかの人を褒めるのである。(P144)

この現代社会において、一人で完結する仕事というのは存在しません。

大なり小なり、何かを成し遂げるには、他者の協力を得る必要があります。

つまり、成功するためには他者と良好な協力関係を構築して維持することが必要不可欠です。

そのために必要なマインドが「うまくいかないときは自分が責任を負い、うまくいっているときは、すぐにほかの人を褒める」ということです。

ギバーはこのマインドを持って行動し続けるので、他人からの信頼をどんどん勝ち取ることができます。

ギバーは「返報性の原理」が味方する

ギバーはとても面倒見がよく、自分を犠牲にして、困っている人や後輩の手助けをつい行ってしまうような人柄です。

ここで、あなたが他人から親切をされたらどんな気持ちになるか想像してみてください。

悪い気持ちにはなりませんよね。

むしろ、あなたが本当に困っているときに、誰かに助けてもらったら、その人に対して感謝を感じて恩返しをしたいと考えると思います。

これは「返報性の原理」と呼ばれるもので、人間誰しもが持つ心理のひとつです。

ギバーは何かを返してもらいたくて与える(助ける)ことはありませんが、常に何かを与える存在です。

そのため、ギバーに助けてもらった人は常に返報性の原理を感じているため、ギバーは自然と助けた人から何かを返されてしまう存在なのです。

「成功するギバー」になるためには何をすべきか

ギバーになることが成功に近づくというのは、なんとなくわかっていただけたと思います。

しかし、ギバーには落とし穴があります。

その落とし穴とは「ギバーとしての立ち振る舞いを間違えると、テイカーやマッチャーよりも悪い結果を招いてしまうこと」です。

要は「搾取されるギバー」になってしまいます。

そこで、この章では「搾取されるギバー」を回避するためのポイントを説明します。

他者利益と自己利益を両立させる

ギバーと聞くと、自己犠牲をしながらひたすら他人に与え続けなければならないような印象を受けます。

それは間違いではなく、ギバーは「他者利益のために自己犠牲をする」という特徴は持っています。

しかし、他人のことを優先しすぎて自己犠牲ばかりをしてしまうと、「搾取されるギバー」に一直線です。

成功するギバーは他者利益を大切にするのと同じくらい自己利益も大切にしています。

このことは、カナダの心理学者ラリー・ウォーカーとジェレミー・フライマーの研究から分かっています。

「誰に」与えるかで成功が決まる

本書には、失敗してしまうギバーの特徴として、以下の記載があります。

男女を問わず多くのギバーを悩ませている三つの罠ー信用しすぎること、相手に共感しすぎること、臆病になりすぎること

ギバーは他者利益を優先して自己犠牲をいとわない人なので、与える相手を間違えるとギバーは一方的に損をしてしまいます。

例えば、ギバーが与える相手が「テイカーの詐欺師」であれば、ギバーは際限なく搾取されるでしょう。

もちろん、テイカーの詐欺師から何かを返されることはありません。

こういった「搾取されるギバー」にならないためには、「誰に」与えるかがとても重要です。

少なくとも、テイカーへ与え続けることさえ辞めれば、「搾取されるギバー」を回避することができます。

テイカーを見分ける方法

では、どうしたらテイカーを見極められるのでしょうか。

その方法は「相手の考えを注意深く観察すること」です。

相手を観察する際のポイントは、相手の「見た目」や「感情」に流されることなく、相手の「考え」に注目することです。

特に、長年の関係がある相手では、相手の「感情」というものに共感してしまいがちです。

本書では交際中のカップルの実験(P303)が挙げられていますが、共感しすぎることで、自己犠牲のギバーとしてふるまってしまうそうです。

こういう不利益を避けるためには「相手の感情を察する」のではなく、「相手の考えを理解する」必要があります。

「相手の考え」にフォーカスすることで、変に察することなくなり、相手へ何度も質問することで、相手の考えを明らかにできます。

考えが明らかにできれば、その人がテイカーなのかは判断できるようになります。

テイカーとの付き合い方

テイカーとは付き合わない方がいいですが、仕事やプライベートの関係上、テイカーを避けられない場合も多いでしょう。

しかし、テイカーはギバーを搾取する存在なので、ギバーは与えたら与えた分だけ損をしてしまいます。

そんな時に使えるテクニックとして、テイカーとの関係を避けられない場合は「マッチャーとしてテイカーと付き合うべき」と本書で紹介されています。

ギバーはマッチャーとしてふるまうことで、もしテイカーに与えた分を返してもらえなければ、そこで関係を終わりにすればOKです。

自分も他人も大切にできるギバーになろう!

今回紹介した内容は、本書の一部に過ぎません。

この記事には文字数の関係からまとめられませんでしたが、僕的には次のような面白い内容がありました。

  • テイカーはSNSで見分けられる
  • ゆるいコミュニケーション
  • 自己成就予言

もし、GIVE&TAKEに興味を持ったら、ぜひ読んでみてください。

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