- 修了考査の合格基準は何で決まるのか
- 合格基準に沿った効率的に勉強する科目の優先順位
修了考査に効率的に合格するには、その仕組みを把握することがとても大切です。
この記事では、公認会計士試験の最後の壁である修了考査の合格基準について、わかりやすくまとめてみました。
この記事を読むことで、修了考査の合格基準を知ることができます。
また、効率よく合格するための勉強方法についても簡単に説明していますので、ぜひ読んでみてください。
目次
修了考査の「合格」と「足切り」の基準

修了考査は合格基準がある程度明確にガイダンスされています。
また、合格基準とは反対に、問答無用で不合格にされてしまう足切りの基準もあります。
合格基準は「総得点の60%以上」
修了考査は、
「会計に関する理論及び実務」
「監査に関する理論及び実務」
「税に関する理論及び実務」
「経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む。)」
「公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理」
の5科目で行われます。
正式名称は長すぎるので、以降では「会計」「監査」「税務」「経営」「職業倫理」と省略して説明します。
これらの科目の配点は次の通りです。
修了考査の科目ごとの配点
- 会計:300点
- 監査:300点
- 税務:300点
- 経営:200点
- 職業倫理:100点
- 合計:1,200点
さて、肝心の合格基準ですが、修了考査の受験案内には以下のように明記されています。
合格基準は、総点数の 60%を基準として、修了考査運営委員会が相当と認めた得点比率とします。
修了考査の受験案内
つまり、総得点の60%である720点が合格基準となります。
ただし、「修了考査運営委員会が相当と認めた得点比率とします。」と書いてあるように、試験ごとに基準が変動するものと言われています。
明確に「今年の修了考査は×××点が合格!」というのは、これまで公表されたことがありません。
なので、どの程度基準が変動しているのかは、よく分かっていません。
一昔前の修了考査の合格率はずーっと70%でした。
なので、合格基準が総得点の50%とか、かなり低めに調整されていたんじゃないかなと思っています。

ただし、近年は合格率が50%前後に下がっていますので、厳密に総得点の60%を基準に合格を判定している感じがします。
僕の感覚としては、近年は総得点の55%~60%が基準だと思っています。
近年の会計士の質は決して高いとは言えないので、厳密に60%を合格基準にしていたら、合格率はもっと低い気がします…。

足切り基準は「1科目40%以下」
修了考査には足切りが存在していて、これも修了考査の受験案内に明記されています。
ただし、満点の 40%に満たない科目が1科目でもある者は、不合格となることがあります。
修了考査の受験案内
例えば、300点満点の会計であれば120点未満、200点満点の経営であれば80点未満、100点満点の職業倫理であれば40点未満で、即不合格ということです。
足切りに特別な対策不要ですが、足切りされる危険性があることは十分に認識しておくべきです。
というのも、「職業倫理」という科目で足切りされるという人が、一定数存在するからです。
確かに、「職業倫理」の配点は低く、その内容も勉強しなくても点数が取れそうな常識問題的なので、甘く考える人がいるのは理解できます。
しかし、実際には勉強をしないで点数を取れるほど甘くはないです。
職業倫理を全く勉強しないと足切りされる可能性があるので、注意しましょう。
修了考査の合格基準は短答式に似ている
ここまで読んでいただければ、修了考査と短答式の試験制度が、基本的には同じということが分かります。
そのため、勉強や試験対策の方法は短答式の時と似てきます。
まず大切なのは、足切りにならないようにすることです。
苦手科目を放置したり、経営や職業倫理が簡単そうだからといって勉強をおろそかにして言えると、足切りされて即刻不合格になります。
次に、配点の高い科目で高得点を取れるようにすることです。
職業倫理で100点満点を取ったところで、総得点が1,200点であることを考えると、合否にはさほど影響しません。
それよりは、300点満点の会計・監査・税務で安定して180点取れる方が、合格へ近づきます。
合格基準に合った勉強科目の優先順位

修了考査の合格基準が分かったところで、どの科目が合格に大切なのか解説します。
税務(最重要)
税務は修了考査に合格するうえで最重要の科目です。
どれくらい重要かというと「修了考査=税務」と言っていいくらいです。

なぜ、税務が修了考査において重要なのか。
それには2つの理由があります。
1つ目の理由は税務という科目は難易度が高いことです。
というのも、税務の試験内容は、監査法人に勤めていても日常的に触れる内容ではありません。
そのため、働きながら税務を学ぶということはないと言っていいです。
実務補習所で多少は勉強しますが、それだけの勉強で合格できるほど、修了考査の問題の難易度は低くありません。
こういった理由から、合格基準の得点率60%を安定して取るのが難しく、勉強不足なら足切りの恐れも十分にある科目です。
2つ目の理由は配点が300点ということです。
合格基準の章で説明した通り、修了考査は総得点の60%を基準に合否判定をしますから、配点が高い科目が合否に直結します。
短答式試験で「財務会計論が200点満点だから重要」というのと一緒です。

会計・監査(重要)
税務に続いて重要なのが、「会計」「監査」です。
理由は単純で、配点が300点だからです。
配点だけ見れば税務と同じだけの重要性はあります。
しかし、会計と監査の重要性が税務よりも低く設定したのは、会計と監査は監査法人に勤めていれば日常的に触れることが多いからです。
加えて、試験内容は論文式試験の延長にあるようなものなので、論文式試験を合格している人であれば、驚くような内容は多くないです。
だからといって、油断をしてはいけないです。
新しい会計基準は年々追加されますし、それが修了考査の試験に反映されます。
加えて、連結会計や税効果会計など難しい論点が修了考査では毎年のように出題されます。
連結会計や税効果会計は実務で触れていない人も多い範囲ですし、単純に基礎知識を忘れている可能性が高い論点なので、きっちり勉強しないと合格点を取るのは難しいです。
経営・職業倫理
「経営」と「職業倫理」は、これまで紹介した3科目と比較すると、優先度が低くなります。
その理由は2つあって、「配点が低いこと」「難易度が低いこと」です。
まず配点についてですが、経営は200点、職業倫理は100点と、2科目を合わせてようやく300点です。
会計・監査・税務は1科目で300点であることを考えると、経営と職業倫理は優先して勉強する科目ではありません。
次に難易度ですが、経営と職業倫理は、会計・監査・税務に比べれば簡単です。
どのくらい簡単かというと、僕の感覚的な話になりますが、経営は2日、職業倫理は1日の勉強時間で十分に合格ラインに到達できます。
一番難易度の高い税務で合格ラインに到達するには、最低でも2週間ぐらいは欲しいので、その税務と比べると、求められる勉強時間は税務の10%~20%といったところです。
こういった理由から経営と職業倫理は相対的に優先度は低くなりますし、合理的と言えます。
しかし、無勉強で合格ラインに到達できるほど、経営も職業倫理も甘い科目ではありません。
「職業倫理を全く勉強しなかったら足切りされた」というのは、不合格理由として頻繁に聞きます。
会計・監査・税務に比べて優先順位が低いのは確かなのですが、最低でも足切りはしないように勉強しましょう。
この記事のまとめ
- 修了考査の合格基準は総得点の60%、720点が目安
- 職業倫理の勉強をしないで足切りされて不合格になる人が毎年のようにいる
- 配点が高い「会計」「監査」「税務」を優先的に勉強するのが合格の秘訣
偉そうにこの記事を書いている僕ですが、修了考査を受験するまでは、先輩たちの話を鵜呑みにしていて、あんまり勉強しなくても合格できるものと思っていました。
しかし、実際に勉強をしてみると「この試験内容で総得点の60%も取らなきゃいけないの…?」と絶望した思い出があります。
ただ、修了考査対策をきちんと進めていければ、短答や論文の記憶がよみがえってきて、意外と点数が取れるようになりますので、そこまで心配する必要はありません。
ではでは。