・修了考査に合格するための効率的な勉強方法
・修了考査は「答練3周の勉強だけで合格できる」という噂の解説
公認会計士の最後の試験である修了考査は、短答式や論文式に比べれば簡単ですので、受験生の多くが「簡単」と思っています。
また、監査法人の先輩からは「答練3周で余裕で合格できるよ」と言われることも、しばしばあります。
ただし、私の感覚では、修了考査はそんなに簡単な試験ではありませんし、合格できない人は何年も合格できないままです。
一方で、どんな勉強をしたら修了考査に合格できるのかという勉強ノウハウは、あまり見かけません。
そこで、この記事では、社会人から勉強して会計士になった私が実際に行った勉強をベースに、修了考査の勉強方法について解説したいと思います。
ちょっと自慢ですが、短答式から修了考査まで、すべて1発合格してます!

この記事を読めば、修了考査の科目ごとの難易度や、最低限これだけは勉強していればOKというラインが分かるはずです。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
科目ごとの勉強方法

科目ごとに「勉強の優先順位」と「教材ごとの勉強の必要性」を解説しています。
勉強の優先順位については、こちらの記事に詳細を書いているので、興味のある人は読んでみてください。
教材ごとの勉強の必要性は、次の通りに区分しました。
教材ごとの勉強の必要性
- A:必須(やらないと、合格は難しい)
- B:ほぼ必須(ここまでやれば、合格可能性が高い)
- C:余裕があれば(ここまでやれば、ほぼ合格できる)
- D:不要
修了考査は、
「会計に関する理論及び実務」
「監査に関する理論及び実務」
「税に関する理論及び実務」
「経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む。)」
「公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理」
の5科目で行われます。
正式名称は長すぎるので、以降では「会計」「監査」「税務」「経営」「職業倫理」と省略して説明します。
「会計」の勉強方法
勉強の優先順位 | 講義 | テキスト | 答練 | 基準 |
高い | C | B | A | C |
会計は配点が300点と高いので、勉強の優先度が高い科目になります。
会計の勉強方法は「答練を中心に勉強して、分からない点があればテキストや講義に戻る」といった感じです。
計算で自信のない論点やIFRSを業務で触れたことがない人は、その部分の講義を答練の前に視聴するのも有効です。
基礎知識に自信のない論点は、答練を解いてもあんまり勉強効率は良くないです…。

計算については確実に正答できるようにする必要がありますので、計算に自信がない人は答練以外でも計算練習はしましょう。
私はTACで勉強したのですが、TACでは計算テクニック用の講義がありました。
なので、計算が上手くできない論点については、こういった講義を勉強に取り入れましたね。

基準については、答練で出題された論点ぐらいは基準を読むことをオススメします。
本番では基準の細かいところはあまり出題されませんが、頻出の基礎的なところはどこが出てもおかしくないので、基準を少しでも見ておくと気持ちに余裕が生まれます。

IFRSが試験範囲に入っているけど、どのくらい勉強すればいい?
IFRSについては、試験本番に出題される割合は意外と少ないです。
そのため、IFRSの勉強にはさほど時間をかけずにIFRSは最低限の勉強でOKです。
「監査」の勉強方法
勉強の優先順位 | 講義 | テキスト | 答練 | 基準 |
高い | C | B | A | B |
監査も配点が300点と高いので、勉強の優先度が高い科目になります。
監査の勉強方法は「答練を中心に勉強して、分からない点があればテキストや講義に戻る」といった感じです。
勉強方法は、会計と同じですね。
監査では、特に難しい計算問題があるわけではないですし、出題内容は論文式試験とあまり違いがありません。
なので、私は論文式試験の感覚を取り戻す意味で、移動時間に講義を聞いていました。
油断しがちな点としては、試験で出題される論点は、実務でよく触れる論点と異なるところが多いところです。
例えば、監査上の主要な検討事項(KAM)について、実務で検討する機会は少ないですが、修了考査では専門用語できっちり説明させるようなことが求められたりします。
普段の実務で監査に自信があっても、試験対策の監査はまた別物と考えてちゃんと勉強しないと、足元をすくわれかねません。
「税務」の勉強方法
勉強の優先順位 | 講義 | テキスト | 答練 | 基準 |
超高い | C | B | A | B |
税務は、配点が300点と高く、監査法人に勤めていることのアドバンテージをほとんど利用できない科目であるため、重要性が超高い科目になります。
個人的には「修了考査 ≒ 税務」だと思うくらい重要な科目だと思ってます!

税務の勉強方法は「講義とテキストでしっかりと勉強した後に、答練を繰り返す」になります。
会計や監査と違って、最初から答練をやってもほとんど勉強になりません。
なぜなら、普段の監査法人の業務では、税務の試験で出るような内容はほとんど経験しないからです。
加えて、試験内容が論文式と大きく異なっています。
具体的には、修了考査では相続税について新たに出題されたり、法人税の中でも企業再編税制が頻出で難易度の高いところが挙げられます。
論文式試験で税務の勉強をやりこんだ人以外は、論文式の貯金で修了考査まで合格することは、まず無理です。
そのため、税務の勉強のスタンスとしては、ゼロから勉強をし直すという意識を持つことをオススメします。
私は「配当金の益金不算入」や「償却費の損金不算入」という基本論点すら、怪しい状態での勉強スタートでした笑

修了考査の中でも難しい科目である税務の中で、唯一幸いな点は、基準を読む必要がないことです。
論文式試験は問題によっては税法の条文を記載させることがありますが、修了考査ではそういった問題はあまり出題されない傾向があります。
「経営」の勉強方法
勉強の優先順位 | 講義 | テキスト | 答練 | 基準 |
普通 | B | B | A | D |
経営は「配点は200点」「難易度がさほど高くない」ことから、重要度としては普通です。
経営の勉強方法は、経営の中の試験内容で分けて取り組むことをオススメします。
そもそも、経営の試験内容は大きく2つに分けられます。
それは「経営関連の基礎知識と計算」と「IT関連の基礎知識と監査」です。
「経営関連の基礎知識と計算」については、講義は見ないで、テキストと練習問題をすればOKです。
人によっては勉強しなくても正答できるくらい、問題としては簡単です。
講義を見るとしたら、テキストや練習問題でよく分からなかったところを補足するときでしょうか。
一方で「IT関連の基礎知識と監査」については、答練をやる前に講義を見ることをオススメします。
なぜなら、「IT関連の基礎知識と監査」については、これまでの公認会計士試験や監査実務で触れてこない内容が多いからです。
そのため、最初から答練に取り組んでもまともに解答ができないので、講義やテキストであらかじめ勉強しておく方が効率的です。
「職業倫理」の勉強方法
勉強の優先順位 | 講義 | テキスト | 答練 | 基準 |
普通 | A | A | A | C |
職業倫理の配点は100点で、内容も難しくはないので、重要度は普通です。
ただし、油断していると職業倫理で足切りを食らう可能性があるので、要注意です

職業倫理は、まずは講義を見ましょう。
職業倫理の答練を最初から解こうとしても、解き方が分からないとつまづきます。
ただ、解き方さえわかってしまえば、さほど難しい科目ではありません。
職業倫理は知識をどこまで暗記できるか次第の科目なので、ひたすらテキストと答練を繰り返すのみです。
職業倫理以外の科目の勉強が完璧で、勉強時間が余っていれば、職業倫理関連の基準を読むのも効果的です。
逆に、会計や税務などの他の重要科目の勉強が十分でないのであれば、職業倫理にあまり時間をかけてはいけません。
職業倫理は、あくまで最後の詰めの科目であることを念頭に置きながら、勉強をしましょう。
答練は何週すべきか
これまで説明した勉強内容をしたうえでであれば、答練は2周ぐらいで合格ラインには到達すると思います。
その根拠は完全に私の経験則ですが、どの科目もおおむね答練2周程度で合格できたからです。
科目によっては、1周でろくに復習してないというのも、なくはないです…。

「答練を3周すれば合格できる」は本当か?

監査法人の先輩からは「答練を3週すれば修了考査は合格できる」という話をされると思います。
この「答練3周」の意味は文字通りなのですが「講義やテキストをやらずに、答練だけを3周すれば合格できる」という意味です。
この噂の根拠はよく分からないですが、おそらく一昔前の修了考査の印象から、こういった噂が出てきていると私は推測しています。
一昔前の修了考査は、合格率が70%になるように点数を調整されていた節があります。
そのため、受験生の中で相対的に上位70%に入れば合格できて、それが「答練3周」ぐらいの勉強量だったということです。
で、この噂が近年の修了考査に当てはまるかというと私は当てはまらない思っています。
というのも、近年の修了考査の合格率は50%~60%と、昔に比べれば低下する傾向です。
年度によっては50%を割り込みます。
また、実際に修了考査の勉強をしてみればわかりますが、予備校の答練だけでは、修了考査の試験範囲を十分にカバーできていません。
こういった状況から「答練3周」という言葉を鵜呑みにして勉強すると、痛い目を見る可能性が高いと考えます。
合格への最善策は「予備校のカリキュラム通り」に勉強すること

ここまでいろいろと書いてきましたが、難しく考えなくても、予備校のカリキュラムに従っていれば、余裕で合格できます。
なぜカリキュラム通りで合格できるのかというと、カリキュラム通りで勉強をしている人がほとんどいないからです。
というのも、修了考査を受ける人のほとんどは、監査法人や事業会社で働いている人ばかりです。
そのため、働きながら予備校のカリキュラムをこなすだけでも、大変な労力です。
仕事に余裕がある一部の人を除いて、試験休暇に入ってから勉強する人が多いです。
ちなみに私は仕事に忙殺されて、予備校への申し込みそのものが8月と、かなり遅めでした…

もし、あなたがカリキュラム通りに勉強を進められれば、勉強量は受験生の中で自然と上位層になっています。
修了考査は総得点の60%を取れば合格とされる絶対評価の試験ではありますが、少なからず得点の調整が入る相対評価の面もあります。
そのため、勉強時間の絶対量は大切ですが、受験生全体の中でどれだけ勉強時間が多いかという相対的なところも意識する必要があります。
このように考えると、予備校のカリキュラム通りに勉強をこなすというのは、かなり合理的な勉強方法と言えます。
まだ予備校に申し込んでいない人は、「TAC」でも「CPA」でも「大原」でも何でもいいので、早めに予備校に申し込むことをオススメします。
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この記事のまとめ
- 「会計」「監査」は答練から勉強してOK
- 「税務」は講義やテキストから勉強したほうが効率が良い
- 「経営」の中の計算問題は答練から勉強、ITは講義やテキストから。
- 「職業倫理」は講義からの勉強が効率が良い
- 「答練3周」で合格という噂は鵜呑みにしない方が安全
- 勉強方法に困ったら予備校のカリキュラムに従うのが安定択
どんな勉強方法にしても、予備校に申し込むのは必須だと私は考えます。
修了考査の受験生は独学するほど時間的な余裕はないので、お金はケチらずに、早めに予備校に申し込んでください。
念のため、最後に各予備校のURLを貼っておきますので、参考にしてください。