論文式の合格には「1,200時間」の勉強が必要【12月短答合格者向け】

2019年8月18日

「12月短答には合格したけど、論文式合格のためにどのくらい勉強したらいいかわからない……。どの科目にどの程度時間を割いたらいいかもよくわからないな……」

こんな疑問に答えます。

この記事の内容

  • 論文式合格に必要な勉強時間は「1,200時間」
  • 最初に勉強すべき科目は「租税法」「経営学」
  • 苦手な科目にも時間をきちんと割こう

12月の短答式に無事合格しても、すぐに論文式の勉強をスタートしなければなりません。

しかしながら、短答式と論文式では試験形式や科目が大きく異なりますから、どのくらい勉強をしたら合格できるのかが初学者はなかなか想像できないと思います。想像できないと勉強をスタートしづらいものです。

かくいう僕も、論文式の勉強をし始めたときは、どのくらい勉強したらいいのかよくわかっていませんでした。自分の勉強ペースを守ることは注意していましたが、振り替えてみると闇雲に勉強していたと白状せざるを得ません。

そんな状況ではありましたが、「12月短答→論文」というルートで、無事に1発で合格できました。

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結果が出てホッとしましたが、勉強しているときはとても不安でした。

この記事を読んでいるあなたも、同じような不安を抱えているのではないでしょうか。

この記事では、僕の論文式の経験をもとに論文式に1発合格できる勉強時間を紹介します。この記事を読んで、論文式の勉強している人の不安を少しでも取り除ければ幸いです。

1点だけ注意なのが、この記事は「12月短答→論文」の受験をベースに書いてあることです。

論文式合格に至るまでのルートは他にも「5月短答→論文」「過年度→論文」があります。この2ルートに関しては解説していませんので、このルートの方はあくまで参考に読んでください。

論文式合格に必要な勉強時間は「1,200時間」

「1,200時間」の根拠を、実際の僕の勉強時間をもとにして説明します。

科目別の勉強時間

  • 財務会計(計算):144時間
  • 財務会計(理論):148時間
  • 管理会計:127時間
  • 企業法:140時間
  • 監査論:124時間
  • 租税法:235時間
  • 経営学:162時間

合計すると「1,080時間」でした。

この時間の中には「授業」「答練」「自習」など、すべての勉強時間が含まれています。

「1,200時間よりも少ないやんけ!」と思われるかもしれませんが、移動時間やスキマ時間の勉強は細かすぎて記録はしていません。

また、勉強時間の記録をしなかった日や忘れた日もあるので、そういったことを考慮すると、勉強時間は1,200時間を間違いなく超えています。

ちなみに、この勉強時間は本当に勉強をしている時間です。

勉強時間は「BeFocused」というアプリで管理していたため「机に向かっているだけ」といった見せかけの勉強時間は一切入っていません。

1,200時間という時間は決して少なくない

「1,200時間」と聞いて「思ったより勉強してないのでは」と思うかもしれません。

そこで、実際にどの程度の勉強量なのか、計算してみましょう。

「12月短答→論文」で確保できる勉強期間は12月中旬から8月下旬なので、ざっくり8か月間と考えます。休息日ややる気が起きなかった日を考慮すると、1か月当たり25日ぐらいが勉強できる日とします。

すると、次のような式が出来上がります。

1,200時間 ÷ (8か月× 25日)= 6時間

上記の割とゆるめの前提でも、1日あたり6時間は勉強している計算になります。

「1日あたり6時間って思ったより少なくね?」と感じるかもしれませんが、僕はかなり多いなと思います。

勉強でもゲームでも仕事でもバイトでもいいのですが、1日6時間もやったら、けっこう疲れた経験はありませんか。

社会人だったら、1日7~8時間の勤務をした後は、疲れで何もやる気が起きないと感じたことはないですか。

そう、1日あたり6時間も集中して何かをやるということは、かなり体力を使うことなのです。

このように考えると、論文式合格のために1,200時間というのは少なくない、むしろちゃんとこなすのは難しい時間量だと思います。

ここまでで目安の勉強量は把握できたと思います。ここからは論文式の勉強で意識した方がいいポイントを教えたいと思います。

最初に勉強すべき科目は「租税法」「経営学」

短答式の合格が1月中旬にわかったら、最初に着手すべきは「租税法」と「経営学」の2科目です。

なぜなら、この2科目は論文式から初めて登場する科目だからです。

新しい科目というだけで、最初は戸惑うことばかりです。その科目特有の概念や考え方を覚えなくてはなりませんし、これまで4科目でよかった勉強が6科目に増えるのですから、勉強習慣も変えざるを得ません。

これらを考慮すると、租税法と経営学に慣れてからが、本格的な論文式の勉強スタートといえます。

他の4科目は短答式で基礎がだいぶできている

租税法と経営学を優先してやった方がいいという背景には、ほかの4科目は基礎ができているという前提があります。

短答式に合格できる実力があるということは、論文式に合格できるための基礎知識はすでに習得しています。もちろん、論文式の対策はしなければならないのですが、それはインプットよりもアウトプットの方法に慣れるためです。

基礎知識のある科目とない科目、どちらを優先すべきかと問われれば、基礎知識のない科目を優先すべきです。

「12月短答→論文」にとって狙い目の科目である

先輩から「租税法と経営学は簡単」と聞いたことはないでしょうか。

これ、ウソとホントの部分が入り混じっています。

ウソの部分は、租税法と経営学の科目自体は決して簡単ではないということです。実際に勉強してみると実感すると思いますが、問題を正答するのが結構難しいです。

ホントの部分は、最終的な成績は意外と好成績な場合が多く、結果的には簡単と感じるということです。

なぜ好成績になるかというと「5月短答→論文」の受験生が一定数いることです。

彼らは5月の短答式試験に集中しますから、論文式の対策は必然的に後回しになります。5月短答が終わって初めて租税法と経営学を勉強するという人は少なくないですし、勉強量も合格できるための最低限の勉強(偏差値50~52程度)しかしない場合も多いです。

そのため、「12月短答」の受験生の方が租税法や経営学に使える時間が多くなるため、自然と好成績になるのです。

そこにプラスアルファの勉強ができれば、あなたの合格を後押ししてくれる科目になります。

後回しにすればするほど、勉強する機会がなくなる

租税法と経営学は論文式から初めて着手する科目であるため、最初は思うように勉強が進まないと思います。

そうすると、これまで短答式で勉強して慣れた4科目に逃げがちで、租税法と経営学が疎遠になっていきます。疎遠になれば成績は伸びませんから、ますます着手しづらくなります。

このようなデフレスパイラルができてしまい、気づけば論文式直前まであまり勉強をしていない…なんてことが起こります。

租税法と経営学をきちんと勉強の習慣に組み込むためにも、なるべく早く着手して慣れたほうがいいです。後回しにするとどんどん苦手意識ができてしまい、論文式で痛い目を見ます。

苦手科目にも時間をきちんと割こう

苦手科目の勉強はなかなかモチベーションが上がりにくいです。その日は苦手科目をやる予定だったけど、得意科目の勉強に逃げてしまった経験は誰にでもあるものです。

1日2日ぐらいは逃げるのも仕方ないと思いますが、逃げの意識が極端になると、得意科目で苦手科目をカバーすればいいやと考えてしまいます。

しかし、こういった考え方はしない方がいいです。苦手科目にもきちんと時間を割いて、最低限の点数を取れるようにしておいた方が、論文式合格の近道です。

足切りを回避する

論文式試験には一定以下の点数を取ると、全体で合格ラインを超えていても不合格になるという、足切りが存在します。

足切りの基準

ただし、1科目につき、その得点比率が40%に満たないもののある者は、不合格とすることができます。

引用元:公認会計士・監査審査会

つまり、偏差値40以下の科目が1つでもあると、その時点で不合格です。偏差値40はざっくり下位20%を指します。

とはいえ、過剰に意識する必要はありません。

平成30年度の論文式試験では、合格ラインを超えた1,316人のうち、足切りのせいで不合格になった人は11人しかいません(つまり1,305人が合格)。割合でいうと0.8%とかなり少数です。

苦手科目だとしてもそれなりに勉強をしていれば、足切りにはならないでしょう。

しかし、苦手科目を放置していた場合、あなたが足切りの対象にならないとは限らないので、注意が必要です。

苦手意識があると試験全体の結果を悪くしてしまう

苦手科目があると、試験が近づけば近づくほど不安になります。その原因は前述した「足切り」です。それなりに勉強していれば足切りになることはほとんどありませんが、可能性はゼロではありません。苦手科目となればなおさらです。

試験の結果はその日のメンタルに大きく左右されます。予備校の先生から「強気で試験に臨め!」的なことをよく言われると思いますが、これは大げさでもなんでもなく、ある程度勉強をしてさえいれば、メンタルが強ければ合格できます。

逆に、試験初日の監査論や租税法が苦手でうまくできずにメンタル的にまいっているとと、翌日以降の試験の結果が悪くなります。

実際に、初日の出来が悪かったというだけで翌日以降に来ない人もいるくらいです(すごくもったいないです)。

メンタルを安定させるためには、苦手科目がないということが大切です。

現実的に苦手科目がなくすことは難しいと思いますが、少なくとも苦手科目でも最低限の点数が取れるという自信があるだけで、メンタルを安定させることができます。

得意科目だからといって、好成績を残せるとは限らない

短答式試験は出題範囲が広く浅い傾向があります。こういった試験では多くの論点が出題されるため、仮に知らない論点が出ても捨てることが可能で、ほかの論点で点数を重ねることができます。結果として、得意科目は安定して高い点数を取ることができます。

一方で、論文式試験は狭く深い傾向があります。つまり、少ない論点を深く問われます。

そのため、得意科目であったとしても全く知らない論点が出てきて対応できない場合が容易に想定されます。

わかりやすいのは企業法です。企業法は大問が2つ、つまり論点は2つしか出題されません。もし出題された論点が2つともマイナーな論点だった場合、得意科目といえども点数を伸ばすことは非常に難しいでしょう。

また、得意科目でもうまく解答できない問題が多いと、かえって自信喪失につながります。その科目で合格をつかみ取るつもりだったのがうまくできないのですから、焦りや不安を感じるでしょう。

「メンタルが大切」ということは前述しましたが、得意科目の不出来はメンタルを不安定にさせる要因になります。

こういった理由から、得意科目に頼りすぎないことは論文式試験の合格にとても大切なことだと考えます。

まとめ:1,200時間を目安に勉強をしよう!

記事のポイント

  • 「1,200時間」をきっちり勉強するのは大変
  • 論文式の勉強は「租税法」「経営学」から始めて慣れよう
  • 短答式から勉強している4科目は思ったより勉強時間が必要ない
  • 苦手科目がないとメンタルが安定する

論文式に向けて初めて勉強をする人は1,200時間を目安に勉強を始めてみてください。

ちなみに、1,200時間の科目ごとの振り分けは特に説明しませんでした。なぜなら、得意不得意が個人で違うからです。

僕は租税法がとても苦手で足切りをしないようにけっこう時間をかけました。

結果は唯一偏差値を50を切るという体たらくでしたが(笑)、本番で足切りになる不安はあまりなく、メンタルを安定させて本番に望めました。

時間配分に関しては正解はないと思っていますので、試行錯誤しながら勉強してみてください。

じゃーの。

-公認会計士
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