・短答式試験の免除制度の概要
・免除制度の中でお得な制度、狙うべき制度があるか知りたい
こんにちは、ヌルです。
働きながら15か月、退職してから9か月の勉強を経て、論文式試験に合格しました。
現在は、大手監査法人で働いています。
さっそく、公認会計士試験の短答式の免除制度に関する結論ですが、
・免除制度は多数用意されている
・ただし、利用できる現実的な条件は限られている
・狙うとしたら「会計専門職大学院修了者」「税理士試験の科目合格者」のどちらか
となります。
短答式試験の免除制度に興味がある人はぜひ読んでみてください。
それでは本編をどうぞ!
なお、前年度に短答式試験に合格している人は、その翌年度と翌々年度は短答式試験が免除されますが、今回はそのことについては説明していませんので、あらかじめご注意ください!
目次
免除制度の概要

短答式試験では、一定の資格要件を満たしていれば「全科目免除」「科目免除」が認められます。
簡単な資格要件なら科目免除、難しい資格要件なら短答式試験のそのものが免除という制度設計になっています。
免除制度をパターン分けすると、大きく3パターンに分けることができます。
・全科目免除
・3科目免除(財務会計論・管理会計論・監査論)
・1科目免除(財務会計論)
この記事では、それぞれのパターンの条件を説明します。
全科目免除の条件

短答式試験には、ある条件を満たしていれば、試験そのものが免除されます。
つまり、論文式試験に直接挑めるというわけです。
人によっては、論文よりも短答の方が難しかったと言うこともありますから、短答式試験免除の破壊力はかなりデカいものです。
ただし、短答式試験が免除される分、求められる条件というのは超レベルが高いです…。
・商学教授・准教授/商学博士の学位を授与された者
・法律学教授・准教授/法律学博士の学位を授与された者
・司法試験合格者
・旧司法試験第 2 次試験合格者
・高等試験本試験合格者
ちなみに、高等試験というのはかなーり昔に行われていた高級官僚の試験です。
今でいうと国家公務員試験1種みたいなものです。
正直、短答式試験を合格するより、これらの条件をクリアする方が圧倒的に難しいです。
短答式試験の合格より司法試験の方が簡単なんて言う人、いないですよね…。
なので、多くの人には関係ない免除制度なので、「こんな制度があるのか、フーン」程度でOKです。
3科目免除(財務会計論・管理会計論・監査論)の条件

短答式試験には、企業法以外を免除できる条件があります。
それは次の条件のみです。
会計専門職大学院修了者(見込者)
「会計専門職大学院」とは?
会計専門職大学院(会計大学院・アカウンティングスクール)は、会計分野を中心に展開する専門職大学院のひとつです。
ややこしく言っていますが、要は会計専門の「大学院」です。
なので、基本的には大学を卒業した人が、さらに試験勉強をしてから入学する学校になります。
費用は学校によって異なりますが、目安として、国公立なら130万程度、私立なら350万程度となります。
予備校の公認会計士コースは80万程度ですので、会計大学院の方が高いですね。
会計大学院の標準修了年限は2年ですので、勉強機関という意味では、TACなどの予備校の標準的なカリキュラムとあまり差はありません。
注意点としては、会計大学院の主目的は「会計の実務家の育成」であって、「公認会計士試験に合格させること」ではないことですね。
そのため、会計大学院でのカリキュラムでは経営学や会計学を体系的に勉強することとなります。
この点は「今後のキャリアをより充実させる」という意味では重要ですが、「公認会計士試験に合格する」という意味だと遠回りをしている印象があります。
3科目免除のメリット
短答式試験の「財務会計論」「管理会計論」「監査論」が免除されるというのは、事実上、短答式試験の免除と言っていいです。
というのも、短答式試験の中で一番簡単な科目は企業法だからです。
企業法だけを合格基準の70点を取るというのは、さほど難しいことではありません。
勉強時間も200時間程度あれば、十分に合格ラインに到達することができるはずです。
3科目免除のデメリット
「財務会計論」「管理会計論」「監査論」の短答式試験の勉強をしないというのが、デメリットとなります。
わざわざ免除したことがデメリットになるって、どゆこと?
というのも、短答と論文は試験がつながっているからです。
公認会計士試験の構成は、短答で勉強したものが基礎となって、論文ではその応用力を求められます。
そのため、短答対策で勉強したものは、論文にもめちゃめちゃ生きてきます。
むしろ、短答で培えるはずの基礎がない中で、「財務会計論」「管理会計論」「監査論」の論文対策がどこまでできるのか、僕は想像がつきません。
1科目免除(財務会計論)の条件

短答で一番配点が大きい「財務会計論」を免除できる条件は次の通りです。
・税理士となる資格を有する者
・税理士試験の科目合格者
・金融商品取引法等に規定する上場会社等で会計等に関する事務に7年以上従事した者
「税理士となる資格を有する者」(要は税理士)の条件をクリアするには、短くても5年程度の勉強は必要でしょう。
そのため、公認会計士試験のために税理士を目指すのは非効率だと言えます。
「金融商品取引法等に規定する上場会社等で会計等に関する事務に7年以上従事した者」も、条件をクリアするのに7年はかかってしまいます。
これら2つの条件は、狙ってクリアするものではなく、たまたま条件をクリアしていたらラッキーぐらいのものでしょう。
一方で、「税理士試験の科目合格者」は公認会計士試験のために狙ってみてもいい条件だと言えます。
「税理士試験の科目合格者」とは?
「税理士試験の科目合格者」とは、税理士試験の「簿記論」「財務会計論」の2科目を合格している人のことです。
税理士試験は公認会計士試験と制度が異なっていて、科目合格という概念があります。
「税理士試験の科目合格者」のメリット
税理士試験の科目合格は生涯有効です。
つまり、税理士試験の科目合格をすれば、勉強した努力が消えないということですね。
公認会計士試験は合格しなければ何も残らないのと比べると、ちょっと安心感があるのがメリットですね。
また、公認会計士をあきらめても、税理士試験に方向転換もできるということです。
税理士試験は5科目合格が必要ですので、あと3科目合格できれば税理士へ近づけます。
ちなみに、「簿記論」「財務会計論」の合格までの勉強時間ですが、各500時間の勉強が必要と言われていますので、合わせて1,000時間の勉強が必要となります。
上記の「生涯有効」「税理士という保険」を考えると、自己投資としては悪くないリスクリターンだと感じます。
公認会計士を目指すが、税理士でもいいという人は、税理士試験の「簿記論」「財務会計論」の2科目の合格目標にしてもいいかもしれません。
「税理士試験の科目合格者」のデメリット
会計士試験とは別の試験の勉強を1,000時間も必要というのが、デメリットだと考えます。
僕自身、税理士試験の勉強をしたことはないので想像になりますが、会計士試験と税理士試験というのは本質が別物です。
僕の経験になりますが、税理士の方とやり取りをすることがあるのですが、税理士さんは税金には詳しいですが、会計には疎い方がとても多いです。
こういった経験から、税理士試験で培った「簿記論」「財務会計論」が会計士試験にどの程度通用するのか怪しいところです。
また、短答では免除になりますが、論文では免除にならないため、改めて勉強をし直す必要があります。
論文を勉強する際に「初めから会計士試験の勉強をしていれば合格が近かったな」ということは割と起こるんじゃないかなと思っています。
1科目免除のメリット
財務会計論の配点は200点ですから、短答式全体の500点のうち40%も財務会計論が占めています。
配点の比率が大きいため、財務会計論が合格を左右する影響力は大きいです。
また、短答式試験の4科目の中で、一番難しい科目は「財務会計論」だと僕は考えます。
なぜなら、範囲は広いし、めんどくさい計算問題は多いし、理論問題は長文だしと、簡単なところを探す方が難しいぐらいだからです。
財務会計論の配点自体は短答全体の40%ではありますが、必要とされる勉強時間は60%以上はあると考えます。
短答式試験合格までの勉強時間の60%を削減できると考えると、財務会計論の免除がどれだけ有効かがわかると思います。
免除の注意点

各章でもちょいちょい話をしてきましたが、短答で免除になるだけで、論文では免除にならないケースがほとんどです。
そのため、免除制度を使ったせいで論文で苦労してしまうということが発生する可能性が高いです。
免除制度を利用する際は「論文式でどういった勉強をする必要があるのか」を見据えながら、うまく利用する必要があります。
この記事のまとめ
最後に、この記事の内容をまとめてみました
- 全科目免除は現実的じゃない
- 3科目免除には「会計専門職大学院」に通う必要がある
- 1科目免除の中でオススメは「税理士試験の科目(簿記論・財務会計論)合格者」
- 短答で免除した科目が論文で免除されないことが多いので、論文で苦労するかも
お金や時間に余裕がある人は、会計専門大学院や税理士試験の科目合格者を目指して、科目免除を勝ち取るのも悪くない選択肢だと思います。
でも、回り道感は否めないので、絶対に公認会計士になると決めた人であれば、TACや大原などの予備校に通うのが最短だと思います。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
読んでくれてありがとうございました!