公認会計士試験の第一関門である短答式試験。
合格率はおよそ10%。
勉強をいくら積んだとしても、無策でいけば合格することは難しいです。
今回はそんな短答式試験に合格するためにどんな考え方や戦略を使えばいいのか、私の経験をベースに考えていきたいと思います。
※勉強方法ではなく、実際の試験の臨み方や姿勢のお話となります。
目次
短答式試験の内容
戦略を立てる上で大切なことは相手を知ることです。
そこでまずは短答式試験の内容を確認してみましょう。
短答式試験は4科目
短答式試験は4科目を1日で行います。
どんな科目があるのか確認してみましょう。以下をご覧ください。
科目 | 点数 | 試験時間 |
---|---|---|
企業法 | 100 | 1時間 |
管理会計 | 100 | 1時間 |
監査論 | 100 | 1時間 |
財務会計 | 200 | 2時間 |
財務会計が200点満点の2時間のテストで、他の科目よりも2倍の比重があることが特徴的です。
財務会計の比重が大きいことは短答式試験の合否に直結するため、財務会計の対策は短答式試験においてとても重要です。
合格ライン
短答式試験では、4科目の合計点数(500点満点)が公認会計士・監査審査会の設定した合格ラインを上回っていれば合格となります。
合格ラインは試験ごとに変動します。過去4回分の合格ラインは以下のとおりです。
試験 | 合格ライン |
---|---|
平成29年第Ⅰ回 | 71%以上 |
平成29年第Ⅱ回 | 64%以上 |
平成30年第Ⅰ回 | 70%以上 |
平成30年第Ⅱ回 | 64%以上 |
公認会計士・監査審査会では合格ラインを概ね得点率70%前後に設定しています。つまり4科目合計で350点を獲得することが短答式試験の合格する目安となります。
なぜ合格ラインが変動するのかといえば、次のステップである論文式試験へ何名進ませるかというところから計算しているからです。具体的には以下のとおりです。
- 問題が難しかったり論文式試験に多めに進ませる時は合格ラインが低め
- 問題が簡単だったり論文式試験に少なめに進ませる時は合格ラインが高め
足切りライン
短答式試験には足切りがあります。
得点率40%(財務会計では80点、他の3科目では40点)に満たない科目が1つでもある場合、仮に合計得点が合格ラインを上回っていたとしても不合格となります。
ただ、足切りラインは気にする必要がないと考えます。
なぜなら足切りの科目があれば合計得点が合格ラインを上回ることなんてめったに無いからです。
短答式試験の特徴を理解できましたでしょうか。
ここまでのまとめとして、意識していただきたいのは以下の点になります。
- 財務会計の比重が他の科目と比べて高い
- 合格ラインは得点で計算される
次からは、短答式試験の全般的な戦略について説明をします。
どの科目でどのくらい得点するか
合格するには得点率70%が必要です。つまり4科目合わせて500点満点中350点を取らなければなりません。
ここで意識していただきたいのは、財務会計は200点満点であるということです。
極端な例になりますが、財務会計を200点満点取れたとするならば、合格ラインに必要な点数は残り150点となります。他の3科目で平均50点取ればいいということになるため、合格がかなり近くなります。
逆に、財務会計が100点しか取れなかった場合には、合格に必要な点数は残り250点。残り3科目で平均84点を取る必要があります。合格がかなり遠のいてしまいます。
財務会計を得点できるかどうかで合否が決まるのが、お分かりいただけるでしょう。
さて、科目によって得点をしやすい科目とそうでない科目があります。私は科目に得意不得意がなかったので、単純に得点しやすい科目は高めの目標、そうでない科目は低めの目標としました。
具体的には、以下のとおりです。
科目 | 目標点数 |
---|---|
企業法 | 80~90 |
管理会計 | 60~70 |
監査論 | 70~80 |
財務会計 | 140 |
なぜこのような設定にしたかという説明は、科目ごとの戦略で記載します。
問題ごとに難易度があることに注意する
具体的な戦略を考える上で、注意してほしいことがあります。
それは正答すべき問題と間違えていい問題があるということです。
私は短答式試験の問題を解答する際には、以下のようにランク付けする癖を付けていました。
- Aランク:正答率80%以上の基本的な問題。
- Bランク:正答率40%~80%の応用的な問題
- Cランク:正答率40%以下の難問、没問
Aランクの問題
Aランクの問題は合格のためには必ず正答しなければなりません。多くの受験生が正答できる基本的な問題ですから、落としてしまうと合否に大きな影響を与えます。
加えて、簡単な問題が多いため、解答するスピードを早くすることも求められます。
なぜ解答スピードを早くする必要があるのか。その理由はBランクの問題になるべく時間を割く必要があるからです。
Bランクの問題
Bランクの問題はAランクの問題と比べると難易度が上がります。しかし時間をかけて考えられば解けるレベルの問題です。
とはいえ、時間をかけて解答する必要があるくらいの難易度ですから、ミスや見落としも多くなります。正答率としては2問に1問は正答していれば十分です。
Cランクの問題
Cランクの問題はマイナーな論点や複雑な問題形式となりますので、多くの受験生が間違えます。そのため正解できなくても合否に影響は与えません。
難問揃いのCランクの問題には時間をかけないで解答してしまうことが大切です。当たったらラッキーぐらいの気持ちでOKです。
気をつけなければならないのは、Cランクの問題に時間を使ってしまうことです。Cランクの問題に時間を使った場合、得点が見込めるAランクとBランクに使うべきだった時間を無駄にしたことと同じですので、普段の勉強から注意しましょう。
さて、問題の難易度のまとめです。
- Aランクをなるべく早く正確に解答する
- Bランクの問題に多くの時間を割き、できる限り得点を重ねる
- Cランクの問題には時間を使ってはいけない。
このことは、科目ごとの戦略を考える時にも十分意識してください。
手当たり次第問題にチャレンジするといった戦略を取れば、解く必要のないCランクの問題に時間を割いて、AランクやBランクの問題を解答する時間がなくなるといったことに陥ります。
どの難易度の問題が多いかは科目やその時の試験で傾向は変わってきますが、概ね以下のような割合です。
- Aランク…全体の50%
- Bランク…全体の40%
- Cランク…全体の10%
Aランクの問題はほぼ100%で正答し、Bランクの問題を半分正答し、Cランクの問題をすべて不正解とすれば、合格ラインの70%には到達できます。
合否を左右するのはこのBランクの問題です。
Aランクの問題は多くの受験生が正答するため差がつかない。
Cランクの問題は多くの受験生が間違うため差がつかない。
その場で上手く時間を使って落ち着いて解答すれば正答するのがBランクの問題です。つまり実力差がはっきり出てしまう問題なのです。
要は、どのような時間配分をしてBランクの問題に時間を割り当てられるかが戦略を立てる上で最も重要なことなのです。
ちなみに
普段からランク付けする癖を付けておくと、復習に役立ちます。
TACの答練では問題ごとの正答率が開示されたり、解説の授業で講師が「ここは正解してほしい」「ここはできなくてもいい」といった発言をしますので、そういった情報を元にして自分のランク付けが正しいかを判断できます。
ランク付けを繰り返していくとその精度がどんどん上がっていきます。
本番の試験までには高い精度でランク付けすることができるようになるため、効率よく問題を解答することができます。
焦らないようにする
試験において一番もったいないのは、解けた問題のはずなのに焦ってしまって取りこぼすことです。
「解けそうな問題がなぜか解けない」「選択肢に計算結果の数値がない」なんてことはよくあることです。そんな状況になると自然と焦りがちですが、焦らないようにあらかじめ対応策を考えておきましょう。
もし焦りそうな状況に陥った場合の一般的な対処法をここでお教えしておきます。
それは、解答できなかった問題は後回しにして、未着手の問題に手を付けることです。
解答済みの問題が増えていくほど心は落ち着きを取り戻します。落ち着いた時にできなかった問題に戻ってみると意外とあっさり解答できることが少なくありません。経験しないと分からない感覚かもしれませんので、もし焦るような状況になったら一度試してみてください。
戦略を立てる際にも、自分を焦らせるような無理な戦略を立ててはいけません。
時間的に厳しい科目は管理会計で、もし全問解答を目指そうとするとかなり無理をする必要があります。その無理は焦りに繋がります。管理会計の戦略は別の記事で説明する予定ですが、なるべく焦らないように、無理のない時間配分するように心がける必要があります。
まとめ
さて、ここまでの話を確認してみましょう。
- 合格ラインは500点満点中350点前後
- 財務会計は200点満点であるため、重要性が高い
- 問題には解くべき問題と捨てる問題がある
- 焦らないように無理のない戦略を計画する
これらを念頭に戦略を練れば、あなたの合格はかなり近くなります。
科目ごとの戦略が気になる方は、ぜひ以下の記事を読んでみてください。