「短答式試験にはどんな科目があるの? 科目の特徴は? 配点は?」
「科目合格はあるの?」
「どの科目が短答式では重要なの?」
公認会計士試験を受けようと考えている人の中には、短答式の科目がどのようなものか興味を持っている人も多いのではないでしょうか。
そんな人の疑問に答えます。
本記事の内容
- 短答式試験は「財務会計」「管理会計」「企業法」「監査論」の4科目
- 科目合格はないけど、合格すれば2年間の免除はある
- 一番重要な科目は「財務会計」
目次
短答式試験は「財務会計」「管理会計」「企業法」「監査論」の4科目
短答式試験はこの4科目で行われます。
4科目の合計は500点です。合格ラインはだいたい70%前後ですので、短答式に合格するためには4科目合計で350点を取ることが目標となります。
以降は、各科目の特徴を簡単に説明します。
財務会計は「簿記」である
財務会計といっても、あまりイメージができないかもしれません。
そこで、財務会計を「簿記」という言葉に置き換えてしまいましょう。
よくある資格で「簿記2級」「簿記1級」というのは、聞いたことがあるかもしれません。その「簿記」です。
そもそも「簿記」とは何を意味するのでしょうか。
簿記(ぼき、英語: bookkeeping)とは、ある経済主体が経済取引によりもたらされる資産・負債・純資産の増減を管理し、併せて一定期間内の収益及び費用を記録することである。より平易な言い方をすると「お金やものの出入りを記録するための方法」が簿記である[1]。
引用元:簿記 - Wikipedia
「お金やものの出入りを記録するための方法」というのが、簿記の意味をわかりやすく示していますね。
もう少しだけ補足すると、簿記とは、企業の経営成績や財務状況を表す「財務諸表」を作る際のルールや仕組みのことです。
「財務諸表って?」となるかもしれませんが、公認会計士の勉強をすればすぐにわかります。今は企業の「成績表」みたいなものと考えていればOKです。
そもそも、公認会計士は財務諸表が正しいかどうかをチェックする人のことです。そのチェックの対象である財務諸表の作り方やルールが「簿記」ですから、公認会計士になるためには絶対に押さえておかなければいけない科目といえます。
簿記の資格は、公認会計士試験にも少しは役に立つ
もし、あなたが「簿記◯級」の資格を持っていたら、公認会計士試験にも活かすことができます。
ただし、公認会計士試験での財務会計(簿記)の出題範囲は、簿記の資格よりもかなり広いです。
そのため、簿記の一般的な資格である「簿記2級」を合格している程度では、ほんの少ししか助けになりません。
財務会計の配点と試験時間
- 配点:200点
- 試験時間:2時間
財務会計の配点と試験時間は、他の科目と比べて特徴的です。
配点も試験時間も、他の科目の2倍となっています。
そのため、短答式試験における財務会計は重要性が高いです。
管理会計は「原価計算」が中心
管理会計も聞きなじみのない言葉だと思いますので、なるべくかみ砕いて説明します。
管理会計は「原価計算分野」と「管理会計分野」の2つに大きく分けることができます。
特に「原価計算分野」が管理会計の中心です。
原価計算とは、商品を製造する際に1つあたりの原価を算出するための計算です。もともとは、戦争期間中に武器等の調達原価の計算のために発達した技術です。現在はメーカーなどが製品を生産する際に、効率よく原価を計算するために利用されています。
簿記2級などの勉強をした人なら「工業簿記」と言ったほうがピンと来るかもしれません。工業簿記がまさに原価計算の一部です。
一方、管理会計分野では、いわゆる「資金繰り」や「財務情報分析」など、企業を効率的に経営するための計算や知識を勉強します。
勉強していないうちは、財務会計と管理会計の違いがいまいちわからないかもしれません。
そこで次のようにざっくり理解してしまいましょう。
財務会計が「企業の経営成績を表す財務諸表を作るための勉強」ならば、管理会計は「企業が効率よく経営するための勉強」なのです。
財務会計は「外部公表用の資料作り」、管理会計は「内部向けの資料作り」と考えてもいいですね。
管理会計の配点と試験時間
- 配点:100点
- 試験時間:1時間
管理会計は試験の内容の割に、試験時間が少ないです。
短答式の4科目の中でもっとも時間に追われる科目だと思ってください。
監査論は「財務諸表監査」の基礎知識を勉強する
公認会計士の独占業務である「財務諸表監査」の、その基礎理論を勉強するのが監査論です。
監査論の内容を説明するために、まずは「財務諸表監査」の説明をします。
「財務諸表監査」(以降、監査)とは、企業の経営成績や財務状況を表した書類である財務諸表に間違いがないかチェックすることです。
財務諸表は企業が作成します。
自社の成績を、自分で通信簿にまとめるようなものです。
その財務諸表は企業外部の投資家に利用されるのですが、企業の自己評価である財務諸表を投資家は無条件で信頼することはできません。
なぜなら、自社の成績を企業自らが作成しているからです。
自分で自分の通信簿を作れたら、都合のいいようにつくる可能性があります。
そのため、投資家は財務諸表が本当に企業の成績を正しく表したものなのか、疑念を持たざるを得ません。
そこで、公認会計士の出番です。
公認会計士の監査における役割は、財務諸表をチェックして間違いがないという「お墨付き」をすることです。そうすることで、投資家は「この財務諸表は正しい」と安心して財務諸表を利用することができます。
このように、公認会計士は財務諸表の信頼性を高める役割があります。
その役割をこなすためには、さまざまなことに気をつけなければなりません。
公認会計士が財務諸表を公正にチェックするためには、その立場が独立しているかが重要になります。もし企業と裏でつるんでいたら、チェックの意味がありませんよね。
また、監査の方法も重要です。
やみくもに資料を読んだり経営者に質問するだけでは、財務諸表の間違いは見つけられません。
きちんとした監査を行うことで、財務諸表の間違いは見つけられるものです。
ですから、監査の方法も学ばないと、監査を適正に行うことはできないのです。
監査論では、前述したような、公認会計士が監査を行う際の基本的な考え方や監査の方法といった、監査の基礎知識を勉強する科目です。
監査という公認会計士の独占業務を行うための勉強ですから、公認会計士試験でもっとも公認会計士らしい科目かもしれません。
実際に、監査論は監査の実務に直結しています。
現場の会計士に「公認会計士試験で今もっとも役に立っている科目はなにか」と質問すれば、ほとんどの人が監査論と答えるほどです。
監査論の配点と試験時間
- 配点:100点満点
- 試験時間:1時間
配点と試験時間にかんしては、特に言うことがありません。
無難に合格ラインである70点は確保したい科目です。
企業法は「会社法」が中心
そもそも、企業法という法律はありません。あくまで試験科目としての呼び方です
短答式の企業法の中身は「会社法」「金商法」「商法」です。
その中でも出題のほとんどが「会社法」です。
会社法とは、会社を運営するために必要な法律です。
会社の設立や資金調達、最終的には解散まで、会社法で決められています。
ここまで紹介してきた「財務会計」「管理会計」「監査論」は公認会計士になるためには勉強しなければいけない科目だと、なんとなくわかってもらえると思います。
しかし「企業法」に関しては、公認会計士にあまり関係していないように感じるかもしれません。法律科目ですし、法律でしたら弁護士が専門ですからね。
ただ、「企業法」の中でも「会社法」は公認会計士として知っておかないといけないのです。
公認会計士の中心的な役割は「監査」であると、前述したとおりです。
その監査する際には、取締役会の運営を確かめることや吸収合併などの組織再編が正しく行われたのかをチェックすることが少なくありません。
それらのチェックの成否を判断する拠り所が「会社法」なのです。
会社法も監査で財務諸表が正しいと判断するために使うことがある、ということです。
法律科目なので、これまで馴染みのない人にとってはとっつきにくい科目に思われるかもしれません。しかし、監査に会社法がどのように関係するか考えながら勉強すると、会社法の勉強も意外と楽しく感じられると思います。
企業法の配点と試験時間
- 配点:100点満点
- 試験時間:1時間
企業法の配点と試験時間も、特に言うことがありません。
企業法は他の科目と比べると、努力が点数に結びつきやすい科目です。
そのため、できれば80点ぐらいきちんと勉強していれば、短答式試験の合格がぐっと近くなります。
科目合格はないけど、合格すれば2年間の免除はある
短答式では科目合格はないです。
あると思われている方も多いかもしれませんが、科目合格があるのは論文式のほうです。
短答式では科目合格がない代わりに、短答式に合格すると、短答式に合格した翌年と翌々年は短答式試験を免除で論文式試験を受けることができます。
たとえば、平成30年度の12月短答に合格したとします。もし平成30年度の論文式に不合格だったとしても、平成31年度と平成32年度の論文式試験は、短答式試験を受けることなく受験することができます。
こういった制度ですから、短答式はとにかく合格することが大切です。
一番重要な科目は「財務会計」
短答式で一番重要な科目は財務会計です。
なぜそういえるのでしょうか。理由は2つあります。
配点が200点で、他の科目より高い
短答式試験の合否は500点満点で、何点取れたかが基準となります。
例年の合格ラインはだいたい70%前後ですので、合格するためには4科目合計で350点を取ることが目標となります。
ポイントは「合否が"得点数"で決まる」ということです。
財務会計の配点は200点で、他の科目の2倍です。
500点満点のうち、40%の配点が財務会計となっているのです。
これだけ財務会計の配点が大きいと、財務会計の出来次第で合否が大きく左右します。
仮に、財務会計の得点率が80%とします。そうすると点数は160点。
350点を取るためには残り3科目であと190点を取れば合格ラインで、1科目あたり63点取ればいい計算になります。
これなら、だいぶ合格が近いなと感じるのではないでしょうか。
一方で、財務会計の得点率が60%とします。そうすると点数は120点。
350点を取るためには残り3科目であと230点も取らなければいけません。1科目あたり77点は必要です。
これだと、合格がかなり厳しいものと感じるでしょう。
このように、財務会計の配点が大きいため、その結果が短答式の合否を大きく左右します。この配点の大きさが、財務会計の重要性を高くしているのです。
勉強に時間がかかる
短答式における財務会計の重要性はわかっていただけたかと思います。
そこに追い打ちをかける形となりますが、財務会計で点数を取るためには、他の科目よりも多くの勉強量が必要となります。
まず、財務会計の出題範囲が広いです。
出題範囲が広ければ、おのずと勉強量も増やさないとその出題範囲に対応できません。
この時点でかなりの勉強量が必要です。
さらに、計算問題を解けるようになるまでに、さらに時間がかかります。
計算問題は理論問題と違って、何度も繰り返しやることで解けるようになります。解けるようになるまでに、かなりの時間を計算練習に使うことになります。
この2つの要因のために、財務会計の勉強量はどうしても多くなってしまいます。
まとめ:財務会計を頑張って、短答式の合格を勝ち取れ!
この記事のまとめ
- 短答式試験は「財務会計」「管理会計」「監査論」「企業法」の4科目
- 財務会計は、配点が200点で試験時間が2時間
- 他の3科目は、配点が100点で試験時間が1時間
- 科目合格はないので、死ぬ気で合格を勝ち取る
- 短答式の科目では「財務会計」が最重要
というわけで今回は以上です。最後まで読んでくれてありがとうございました!