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サイドFIREに邁進中の公認会計士が、会計・財テク・QoLについて書いてるブログ

サイバーエージェントの決算資料での違和感

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こんにちは、千秋です。

サイバーエージェントの決算資料を分析して記事にしようと思って決算資料をパラパラと見ていたら、分析する前に、営業利益の説明にかなり違和感を覚えたので、まずはその部分を記事にまとめてみました。

既存事業の利益と先行投資事業の損失を総額表示

違和感を覚えた決算の資料はこちらです。

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2017年9月期通期 決算説明会資料 スライド5

棒グラフの緑色は既存事業(広告事業・ゲーム事業など)の営業利益、灰色は先行投資事業(AbemaTV等)の営業損失になります。

ぱっと見ると、2017年期は516億円の連結営業利益が出ているように見えますが、516億というのはあくまで既存事業の営業利益です。連結営業利益はその横に書いてある307億円です。

連結営業利益という見出しのスライドにもかかわらず、連結営業利益を純額表示せず(というか純額が当たり前)、既存事業の営業利益と先行投資事業の営業損失を総額表示しているというのは、営業利益をミスリードさせたいのかなと思ってしまいます。

 

2010年期以降、サイバーエージェントは2013年期を除いてずっと増収増益を続けています。しかし2017年期は4期ぶりに前年の営業利益を下回る結果となりました。そのことを受けて投資家は少なからずショックを受けることが考えられます。

おそらくそういったショックを少しでも和らげようとしたのが、この既存事業の利益と先行投資事業の損失を別々に表示するという方法なのでしょう。

2016年期の決算資料を見てみましたが、2017年期と同じ形式では表示されていません。普通に連結営業利益が表示されているだけです。2017年期は営業利益の見せ方に苦労したことが伺えます。

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2016年9月期通期 決算説明会資料 スライド5

AbemaTVで利益が出るのはまだまだ先

サイバーエージェントで利益を出している既存事業のうち、ゲーム事業は成長率に陰りが見えてきました。引き続き高い成長率を実現させるためには柱となる新しい事業が必要です。

そこでサイバーエージェントは新しい収益の柱としてメディア事業、特にAbemaTVを成功させるために2016年期から多額の投資をしています。百億単位の投資を行う経営判断は非常に勇気が必要で、私個人的には応援をしています。AbemaTVが大成功して、日本での新たなインターネットメディアとして確立してほしいと思っています。

しかし、新規事業というのはそう簡単に利益が出るものではありません。実際にサイバーエージェントの経営陣もすぐに利益が出るとは考えていないです。それは2016年期と2017年期の決算説明会資料のAbemaTVロードマップのスライドから伺えます。

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2016年9月期通期 決算説明会資料 スライド35

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2017年9月期通期 決算説明会資料 スライド36

2016年期のスライドでは収益に関する単語はひとつもありませんし、2017年期には「収益の多角化」が優先度低めに記載されています。

なにより「先行投資期」とデカデカと表示されていますので、収益や利益よりも先行投資を行ってメディアとしてのコンテンツ力を強化したいということでしょう。

 

経営陣がAbemaTVで利益が出ないと分かっているのであればこそ、私は連結営業利益の表示方法に納得できません。

先行投資すればその分利益が減ってしまうのは当たり前なのです。であれば「当期は利益が前期を下回った」ことをはっきり言った上で、既存事業の利益と先行投資事業の損失の説明を丁寧にした方が、投資家にとって分かりやすい説明になります。

決算説明会資料は投資家の正しい理解ができるものになってほしい

利益といった共通点では、ロコンドの「広告費用前営業利益」というトンデモ理論も話題になったことを思い出しました。

広告を行えば通常は収益が増えますが、費用も増えるため、利益が増えるとは限りません。多額の広告を行うことでかえって損失になることもあります。

ですが「広告費用前営業利益」を使えば、広告の増収だけが反映された営業利益が出来上がりです。さて、この営業利益に意味はあるのだろうか。いや、ない。

 

サイバーエージェントロコンドの決算説明会資料には、程度の差はあれど、投資家によく見せたいという気持ちが出すぎです。

投資家に企業の業績をよく見せたいという気持ちは分かります。株価が下がるのはそれだけ会社にとって損ですからね。

だからといって、見せ方を工夫しすぎるのはダメです。できる限り正しき会社の現状を理解してもらえる説明をすることを第一に考えるべきです。

 

財務諸表は公認会計士が投資家の正しい投資判断の参考となる情報として監査を行いますが、決算説明会資料は財務諸表ではないので公認会計士の監査範囲外です。そのため決算説明会資料については、経営陣が好き勝手に数字を見せることだってできます。じゃあそうやって作られた決算説明会資料の数字がその会社の現状を表しているものなのかと言われたら、疑問符が出てしまいます。

 

ふと思ったのですが、決算説明会資料も公認会計士がレビューすれば、市場によりいい影響を与えられるんじゃないだろうか。もしそうなれば、仕事が増えて嫌ですが、公認会計士の有意義性が高まるので、悪くないかも。