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「IFRS(国際会計基準)」を現役会計士が分かりやすく解説してみた

こんにちは、"ぬ"です。
会計士として、大手監査法人で東証一部上場企業の監査をしてます。

・「IFRS」って聞くことが増えたけど、難しくてよくわからない。かみ砕いて教えてほしい

こんな要望に応えます。

経理・会計関連の仕事をしている人は、「IFRS」という言葉を聞くことがあるかと思います。

また、上場企業の経理の方だと、「IFRSの導入を検討する」といった具体的な話になることも少なくないでしょう。

とはいえ、「IFRS」について調べても、「概念フレームワーク」「原則主義」などと専門用語が多く、何を言っているのかよくわからないことが多いと思います。

会計のプロである会計士でも、「IFRS」をうまく説明できる人は少ないです。
なぜなら、日本企業の多くは「IFRS」を導入していないため、仕事として出会うことが限られているからです。

会計士でも難しい「IFRS」ですから、現場の経理の方にとっては、さらに分からないものと感じることでしょう。

そこで、この記事では「IFRSとは何なのか」「IFRSが経理の現場に今後与える影響」をできる限り専門用語を使わずに解説します。

この記事を読むことで「IFRSってこんなものなのか」というのをざっくり理解できるよう、できるだけ分かりやすい言葉を使いました。

そのため、会計的な論点などの専門的なことを知りたい方にとっては、物足りないと思います。
その点はあらかじめご容赦ください。

それでは本編へどうぞ!

IFRSとは「高品質でグローバルな会計基準」

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ざっくり言ってしまえば、「IFRS」とは国際的な会計基準です。

「IFRS」とは「International Financial Reporting Standard」の頭文字をとったものです。
「IFRS」は「イファース」「アイ・エフ・アール・エス」と呼ばれることが多いですね。
「IFRS」を日本語に訳すと「国際会計基準」や「国際財務報告基準」となります。

そもそも「会計基準」とは何か

「会計基準とは何ぞや」という人もいると思いますので、簡単に解説します。

会計基準は「財務諸表を作る際のルール」です。
財務諸表というのは「貸借対照表(BS)」「損益計算書(PL)」などのことですね。

もし会計基準がなかったとすると、次のような問題が発生します。

 会計基準がない場合の問題点

  • 基準がないので、どのように財務諸表を作ったらいいか分からない
  • 企業ごとに自由に財務諸表を作れるので、業績比較が難しい

2点目について少しわかりづらいと思うので、補足します。

これは、「投資家の目線」から考えてみてください。

投資家が企業を比較して将来性のある方へ投資したいと思った時に、判断材料に使われるのが財務諸表です。

この財務諸表が企業ごとに全然違う形式・数値の計算方法だったら、財務諸表を単純に見比べるだけでの比較はできません。

比較するために細かな調整をするための手間と専門知識が必要となるので、投資家は嫌になって投資を避けてしまうかもしれません。

こういった問題を避けるために世界各国は、これまで自国の状況に合わせた会計基準を設定してきました。

IFRSが開発された「背景」

近年、グローバル化は進むばかりです。
そのため、企業の比較は世界中すべての企業間でできる必要が出てきました。

しかし、自国の会計基準で作られた財務諸表では、他国の会計基準で作られた財務諸表を比較することは容易ではありません。

国ごとに違うルールで財務諸表を作っていれば、数値も形式も異なるため、比較するには細々とした調整が必要です。

こんな問題から、財務諸表の国際的な比較可能性を確保する必要性が高まってきており、IFRSが開発されました。

IFRSの「特徴」(日本基準と比較)

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IFRSには日本基準と比較して、基本的な考え方が5つ違うといわれています。

 IFRSと日本基準の考え方の違い5つ

No IFRS 日本基準
1 演繹的アプローチ 帰納的アプローチ
2 原則主義 細則主義
3 資産・負債アプローチ 収益・費用アプローチ
4 公正価値重視 取得原価重視
5 経済的単一体説 親会社説

5つのどれもが専門的で、この記事でまとめるには多くの文字数が必要です。。。

なので、この記事では、IFRSと日本基準の大きな違いで比較的分かりやすい「原則主義・細則主義」だけ簡単に説明します。

原則主義(IFRS)と細則主義(日本基準)の違い

分かりやすいので日本基準の「細則主義」から説明します。

日本基準は細則主義となっていて、「会計処理について詳細な実務指針」が会計基準として設定されています。

つまり、「日本基準で会計処理する際には、細かいことまで基準で決まっているので、それに従っていれば会計処理としては特に問題は起きない」ということです。
経理担当者としては、非常に明確で対応しやすいです。

一方のIFRSは「原則主義」となっていて、日本基準のような実務指針は設定されていません。

そのため、具体的な会計処理は経理担当者が独自に判断しなければいけません。

経理担当者が独自に判断ということは、日本基準以上に会計に関する専門知識や経験が必要になるケースが多いです。

日本基準とIFRSの経理担当者の「年収」の違い

原則主義と細則主義の違いを説明しましたが、専門的な内容だったため、違いにピンと来てない人もいるでしょう。

そこで、具体的に日本基準とIFRSでどのくらい違うのかというのを、経理担当者の「年収」で比較してみます。

 会計基準による経理担当者の年収の違い

  • 日本基準:500万~600万
  • IFRS:800万~1,000万

上記はあくまで目安ですが、日本基準とIFRSで年収は「1.5倍~2倍」くらい差が出ます。

「年収差=会計基準の難易度」というわけではありませんが、年収が大きく変わるくらいには、日本基準とIFRSでは違いがあります。

IFRSの「適用状況」

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IFRSは「世界の会計基準の主流」と言って過言ではないほど、適用している国が多いです。

この章では、IFRSの「適用状況」を、世界と日本に分けて、簡単に説明します。

「世界」での適用状況

IFRSは、世界140カ国を超える国で要求(強制的に適用)又は許容(適用してもいい)されています。 

国連加盟国が196カ国程度ですから、その多くの国でIFRSは会計基準として使われているわけです。

経済大国である「EU」「アメリカ」「中国」について、少し補足します。

EUはIFRS適用の先駆けで、2005年1月からIFRSの強制適用となりました。

アメリカは自国の「米国基準」が主な会計基準ですが、近年はIFRSと共同歩調になってきてますので、年々IFRSに近くなってきています。

中国も自国の「新中国会計基準」が主な会計基準ですが、IFRSとの違いは1つだけと言われていますので、ほとんどIFRSと言っていい状況です。

「日本」での適用状況

日本でのIFRSの適用は、2010年3月期から「任意適用」が可能となっています。

つまり、日本の企業は「IFRS」を使うかどうかはの選択ができるわけです。

ちなみに、日本で適用可能な会計基準は、「日本基準」「米国基準」「国際会計基準(IFRS)」「修正国際基準(JMIS)」があります。

日本国内のIFRSの適用状況については、東京証券取引所がまとめてくれているので、それを見てみましょう。

参照:「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析について≪2020年3月期決算会社まで≫ | 日本取引所グループ

 IFRS適用社数

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適用社数は「234社」となっていて、東証全体の割合でみると「6.3%」程度と、社数としてはまだまだ少ない状態です。

 IFRS適用社数の時価総額

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一方で、時価総額ベースで見てみると、適用社数の時価総額合計は「255兆円」となります。

東証全体の時価総額が611兆円なので、割合で言うと「41.7%」。
時価総額で見れば、日本市場の過半数に迫ってきています。

この2つの表から言えることは「IFRSは時価総額の大きい企業ほど導入が進んでいる」ということです。

「企業規模が大きい企業」というのは、事業をグローバル展開している会社ばかりです。

グローバル企業は海外投資家からも注目されているのが分かっていますので、IFRSを導入して、海外からの評価もされやすいように工夫していることがうかがえます。

このように、日本でのIFRSは、導入社数という意味ではまだまだマイナーな会計基準ではありますが、市場規模という意味ではすでにメジャーと言える立ち位置になってきています。

IFRSの「日本での今後」

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最後に、IFRSが今後の日本の経理の現場に与える今後の影響について考えます。

企業によって状況が違いますので、ここでは「海外事業中心の企業」と「国内事業中心の企業」に分けて考えてみます。

「海外事業」が中心の企業の経理担当者への影響

海外事業に注力している企業の経営陣は、少なからず海外の投資家の視線を気にしますので、IFRSの導入というのは検討している可能性が非常に高いです。

なので、そんな企業に勤めている経理担当者は、IFRSは他人事ではなく、もしかしたら明日にも自分事になります。

全く違う会計基準で会計処理を行うということは、転職して別の企業で働くよりも大きな影響だと僕は考えます。

そのため、今の企業に勤続する予定であれば、今のうちからIFRSを勉強することをオススメします。

「国内事業」が中心の企業の経理担当者への影響

日本国内に注力している企業であれば、IFRSの導入はさほど前向きではないはずです。

導入までの労力は相当なものですし、経理担当者には日本基準以上の高い専門知識が求められますので、人材の確保も大変です。

そのことを分かっている経営陣であれば、これまでの日本基準で十分と考える可能性が高いです。

そのため、IFRSが与える影響というものは、直近ではないに等しいです。

ただ、海外事業中心の企業ほど緊急性はないですが、IFRSの勉強するのは損はしないです。

日本基準は年々IFRSに近づけていますので、IFRSで勉強したことがそのまま日本基準の会計に生かせることは多いです。

最近では収益認識基準の導入が話題ですが、導入の背景には「日本基準をIFRSに近づける」ということを目的にしていますので、内容は(いろいろな例外を除いて)IFRSで規定されている収益の規定と同じです。

もし、前もってIFRSを勉強していたら、収益認識基準の理解はとてもスムーズだったはずです。

少し前にはIFRSを日本企業へ「強制適用」するという動きもありました。
最近はあまり話題に上がりませんが、いつか「強制適用」という可能性はゼロではありません。 

まとめ:IFRSは会計基準の主流へ。その影響は日本へも。

 この記事のまとめ

  • IFRSとは「国際的な会計基準」
  • 日本基準からIFRSへ切り替えるとしたら、より高い専門知識が必要となる
  • IFRSは世界のスタンダードな会計基準
  • IFRSは日本においてもスタンダードになりつつある

いかがだったでしょうか。

「国際的な会計基準」と聞くと、なんだか遠い世界の話に聞こえますが、日本でもその存在感はどんどん大きくなっています。

なので、経理の現場にいらっしゃる方であれば、IFRSについて少しでも興味を持ってもらえると、あなたのキャリアにプラスになるはずです。

ではでは。

参考:『IFRS国際会計基準の基礎』
協力:下田公認会計士事務所